先週、オヤジジャーナル(おじさんが発信しておじさんが受信するメディア)が沸き立った話題のひとつにサッカー選手の「澤穂希、結婚」があった。日刊ゲンダイはいきなり冒頭からこう伝える。
《「3・11以後、初の原子力発電所再稼働となった鹿児島・川内原発への批判を封じるために政府与党が仕組んだのか...」なんてタチの悪いジョークが飛び交うほどのインパクトだった。》(8月13日付)
たぶんそのタチの悪いジョークは無遠慮な原発村ならぬ「おじさん村」で言われているのだ。おじさんのドヤ顔を想像しながら読み進めるのはオヤジジャーナルをたしなむ作法である。
さて、澤結婚で私がもうひとつ注目したことがある。オヤジジャーナルはあのフレーズをどれだけ使用してくるのか? という確認である。それはサッカー選手の澤にひっかけた「ゴールを決めた=結婚決めた」というフレーズである。使わないなんてことは絶対にない。さっそく結婚発表翌日の各紙をチェックしてみた。まず「澤選手 愛のゴール」ときた新聞があった。ああ、ベタだ。いったいどこだ。朝日新聞だった。そう、朝日はスポーツ紙並の見出しだったんです。では肝心のスポーツ紙にいこう。
「電撃ゴ~ル」を使ってきたのはスポーツニッポンとスポーツ報知。夕刊フジは「澤ゴーール」のあとにちっちゃく続けて「イン」。手が込んでる。冒頭の文を紹介した日刊ゲンダイの見出しは「沢 電撃婚全真相」「相手の38歳 元Jリーガーの正体」。ゲンダイ師匠は事件並の扱いだった。
さて、各紙をながめて気が付いたことがある。現在すでに澤選手のお相手については情報が知れ渡っているが、結婚発表の翌日にきちんと名前と人柄を伝えた朝刊紙はサンケイスポーツのみだったのだ。サンスポの見出しは「澤結婚 お相手は38歳元Jリーガー イケメン、温厚、ナイスガイ」。リズムがいい。名前は「辻上裕章(つじかみ・ひろあき)」氏。ここでサンスポ記者の秘話が放たれる。
《今だから話せることがある。カタールでの合宿中に高層タワーから非公開練習を"空撮"して関塚隆監督を怒らせたことがあった。険しい表情で歩み寄ってきた辻上さんに注意されると思っていると、「今から怒っているふりをするので、みなさん暗い顔をして下さい」とニヤリ。監督の面子を守りながら記者との人間関係も壊さず、その場を収めてくれた。》
そんな優しい人柄に澤も惚れたのだろう、とサンスポは書く。ああ、かっこいい。この人柄はグッとくるなぁ。
今回「電撃婚」というフレーズが多用されたが、よく考えてみれば芸能人ではなくスポーツ選手なので知らされるときは誰だって「電撃」だ。澤だけではない。その突然のなか、お相手の素晴らしいエピソードを翌日に書けたサンスポが今回はMVPだったと思います。
Written by プチ鹿島
プチ鹿島●時事芸人。オフィス北野所属。◆TBSラジオ「東京ポッド許可局」◆TBSラジオ「荒川強啓ディ・キャッチ!」◆YBSラジオ「はみだし しゃべくりラジオキックス」◆NHKラジオ第一「午後のまりやーじゅ」◆書籍「うそ社説 2~時事芸人~」◆WEB本の雑誌メルマガ ◆連載コラム「宝島」「東スポWeb」「KAMINOGE」「映画野郎」「CIRCUS MAX 」
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