新国立競技場のドタバタは誰に責任があるの? というお題にこたえるべく文部科学省の「第三者委員会」が検証報告書をまとめた。 「戦犯」として名前があがったのが下村博文文科相とJSC(日本スポーツ振興センター)の河野一郎理事長だ。
そもそもJSCとは何か? わかりやすく話してくれた人がいた。
「JSCは文科相の下部組織。もともと五輪のような大きな事業をする部署がなかった。国交省などと比べてスーパーゼネコンを相手に交渉する体験もないし専門家もいない。今回の騒動の責任は文科省にある。下村文科相に」
これは7月19日に放送されたBS朝日『激論!クロスファイア』での森喜朗氏の「説明」である。このあと安倍首相は新国立の白紙撤回を表明し、次のように動いた。
《安倍首相は新国立競技場の建設計画について再検討する関係閣僚会議を発足させた。トップには遠藤利明五輪相を起用し、下村博文文部科学相はナンバー2に格下げ。事業の主導権も日本スポーツ振興センター(JSC)と監督する文科省から、国土交通省に移した。》(週刊朝日 2015年8月7日号)
《「当初から不安視された文科省とJSCにも見切りをつけ、大型公共事業に慣れた国交省を中心に据えた。もう失敗は許されないという決意の表れです」(自民党ベテラン議員)》(同)
どうだろう、先ほどの森喜朗のテレビ番組での「JSCと文科相の不甲斐なさ」の解説通りである。そして今回の「第三者委員会」。責任の所在として名をあげられたのがJSC河野理事長、下村文科相であるが、いっぽうで第三者委員会の柏木委員長の発言で思わず笑ってしまったのが次のセリフだ。
「JSCとしては森元首相の意見は重く感じず、自分自身で決定していただきたい」
JSC河野理事長、下村文科相らの責任とは「いちいち森喜朗にお伺いを立てたこと」のように読める。ちなみに、新国立競技場が白紙撤回になった週のことをもう一度振り返ってみよう。
7月17日、それまで沈黙を守っていた森喜朗が《【単刀直言】森喜朗元首相 「新国立競技場の経緯すべて語ろう」》というインタビューで産経新聞に出た。同じ日に森氏はBS朝日『激論!クロスファイア』の収録(先ほど発言を引用した番組)に参加した。そして同日、安倍首相が白紙撤回を表明したのである。言ってみれば森氏が公の場で弁明を済ませるや、一気に事態が動いたのだ。
安倍首相にとっての派閥の大先輩、森喜朗氏に傷をつけない配慮がみえる。このあとの首相の"リーダーシップ"については先述の通り。そして今回、戦犯が発表された。JSC河野理事長は9月末で理事長を「任期満了」として退任、下村氏も10月の内閣改造で「退任」だという。
なんだか「いちばん上」の森喜朗にいかに触れずに「はい、もう終わり」とするゲームのようにみえるのは私だけだろうか。
Written by プチ鹿島
プチ鹿島●時事芸人。オフィス北野所属。◆TBSラジオ「東京ポッド許可局」◆TBSラジオ「荒川強啓ディ・キャッチ!」◆YBSラジオ「はみだし しゃべくりラジオキックス」◆NHKラジオ第一「午後のまりやーじゅ」◆書籍「うそ社説 2~時事芸人~」◆WEB本の雑誌メルマガ ◆連載コラム「宝島」「東スポWeb」「KAMINOGE」「映画野郎」「CIRCUS MAX 」