この1ヵ月、ずっと気になっていたことがある。安倍首相が伊勢志摩サミットのときに世界の経済状況を「リーマン・ショック前に似ている」と述べたと伝えられた。
5月27日の各紙はリーマン発言一色。
『首相「リーマン前に似る」消費増税再延期へ』(毎日新聞)
『首相、再増税先送り示唆 「リーマン前と似た状況」』(産経新聞)
しかし翌日から『リーマン前に異論』(毎日新聞)、『「リーマン」強調 苦肉の策』(読売新聞)という声が大きくなってくると数日後の6月1日にこんな記事が出た。
『「リーマン前」発言説明、「言葉足らず」 世耕氏が釈明』(朝日新聞)
サミットの会議後に「こんなことが話された」とマスコミにブリーフィングするのが世耕官房副長官だった。なので世耕氏が自らの伝え方がおかしかったと言うのだ。抜粋しよう。
《世耕弘成官房副長官は31日の記者会見で、主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)の様子を記者団に説明した「政府関係者」は自分であることを明らかにした上で、サミットでの安倍晋三首相の発言の説明について「少し言葉足らずだった」と釈明した。》
《「総理が(リーマン・ショックに)似ていると言ったことはないし、私も経済状況が似ていると申し上げたわけではない」と強調した。》
これ、「上司」のフォローをする「部下」の仕事にみえる。下世話に言うなら今回のことで安倍首相は世耕氏に「貸し」をつくったといえる。
となると注目なのは世耕氏の今後の処遇だ(とことん下世話である)。そんなことを考えていたら、ちょうどこんな記事が週刊誌に出た。
『落日の二階王国 世耕官房副長官が参院から衆院へ鞍替えも?』(週刊朝日6月10日号)
和歌山は自民・二階俊博総務会長の選挙区で、二階王国と言われているらしい。しかし先日の和歌山県の御坊市長選挙(5月22日)で、二階氏の長男、俊樹氏が大差で敗れる波乱があった。
そこで、《以前から地元でささやかれていた話が再燃している。内閣官房副長官の世耕弘成氏の参院から衆院への鞍替えだ。二階氏の衆院和歌山3区は、世耕氏の祖父、元経済企画庁長官の世耕弘一氏、伯父の元自治大臣の世耕政隆氏の支援者も多くいる土地柄だ。》(週刊朝日)という。
オヤジジャーナルを読んでいると、安倍首相にとって世耕氏は信頼する部下であり、「自民の裏番長」二階氏は敵に回すとやっかいな重鎮で、どちらも大切な人物だとわかる。二階氏は自分でもその威力は承知しているようで、総裁選では安倍支持を誰よりも先に表明して恩を売っている。
今後、世耕氏が衆院鞍替えという野心があるなら、安倍氏は今回の貸しも含めてどう対応するのか。それに対し「和歌山・二階王国」を必死で守ろうとするであろう二階氏。
息子が負けた御坊市の市長選の直後、二階氏は都内の講演会でこんな発言をしている。「安倍総裁の任期延長、あり得る」(5月25日)
ああ、けなげ。和歌山を頭に入れておくと中央の動きもみえてくるかもしれない。
以上、伊勢志摩サミット記事の「それから」を追ってみました。
Written by プチ鹿島
Photo by qtaro
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