昨年末のまとめで述べたように、今年からは解り易さを少々犠牲にさせて頂き、「ネットウヨク」 という単語自体の定義付けから始めようと思う。
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過去記事に書いた内容と重複するが、そもそも「ネットウヨク」とは、「内弁慶」の派生型でネットでだけイキがってしまう人種を指す「ネット弁慶」という単語が原型と思われる。それに政治的な色が付き、右翼的な物言いをする人間を「ネットウヨク」と、逆に左翼的言動を好む人間を「ネットサヨク」と呼ぶようになった。
この単語は2ちゃんねる誕生以前(おそらく90年代)から存在自体はしており、今のように「ネットで問題を起こす輩はとりあえず全部ネトウヨ」というような使われ方はしていなかった。あくまでも政治思想に基いて使われる単語だったため、自ら「自分はネトウヨだ」と名乗る人間もいたほどで、ネガティブな意味合いだけではなかったのである。それがいつしか相手にネガティブイメージを与えるレッテルとして使用されるようになり、気付けば「ネットサヨク」という単語は忘れ去られ、「ネットウヨク」だけが定着してしまった。ここまでが90年代半ば頃から05年辺りまでのお話だ。
ではどうして「ネットウヨク」だけが世に残ったのだろうか? 実は答えは簡単で、「ネットウヨク的な人間」を指す丁度いい単語がなかったのに比べ、「ネットサヨク的な人間」を指す単語は色々とあったからだ。例えば「バカサヨク」もしくは「ブサヨ」といった具合に、「ネットサヨク」以上に相手を罵るのにちょうどいい単語が存在していたため、論争の相手に「ネットサヨク」などというマイルドな表現でレッテル貼りをする酔狂な人間がいなかったのである。実際に口に出して見れば理解が早いと思うが、【偽善者・エセ人権屋・エセ同和・売国奴・成り済まし○○人......】などと比べると、「ネットサヨク」なんて単語は相手に何のダメージも与えられそうにない。これが 「ネットウヨク」が生き残り、「ネットサヨク」が滅びた最大の理由である。
したがって、なぜ現在の意味での「ネットウヨク」が誕生(または定着)したかと問うならば、どうしても「ネットウヨク」を蔑称にしなければならなかった人間がいたからである。そりゃ自分が何を言っても「ブサヨ乙www」で済まされてしまう立場の人間からすれば、自分だって相手をお手軽な一言でぶった斬れなきゃ不平等を感じるだろう。こうした左右同レベルの人間たちによるウンコの投げ合いによって、【ブサヨ・バカサヨ・プロ市民......】といった単語と同等の意味を持つ「ネトウヨ」という単語が根付いたのである。
では次に「ネットウヨク」という単語をどう定義すべきかについて考えてみよう。 よく言われるのが、在特会をはじめとする「ネトウヨ系団体」は頻繁に街宣活動を行っているため、活動の拠点がネットだけではなく現実の街中にもあるのだから、ネットウヨクと呼ぶべきではないという意見だ。ところが、ネトウヨ系団体がここまで隆盛を誇ったキッカケは、維新政党・新風の元副代表である瀬戸弘幸らがネットを使った宣伝に成功し、ネトウヨ的人間をまとめ上げて組織化したからだ。 瀬戸は新風を応援する勝手連である「新風連」を立ち上げ、ネット上で様々な活動を行った。これが大元となり、通名・桜井誠らを始めとする「次の世代のネトウヨ団体」 が育ち今に至る。
こうした経緯があるため、在特会らを「ネットウヨク」と呼ぶのは少しも間違ってはいない。彼らはネットを通じて集まり、ネットを通して情報収集し、その成果を街中でまくし立て、その模様を更にネットで発信しているのだから、活動の大部分をネットに依存した、紛うことなき「ネットウヨク」である。
では逆に「ネットウヨク」と呼ぶべきではない存在とはいかなる人種だろうか? 先に述べた単語の成り立ちから言えば、その言葉を向ける対象が「ネット上でウヨク的な文言をまくし立てる輩」でないのならば、安易なレッテル貼りは避けるべきである。別に右翼的でも何でもない人間に対して「ネトウヨネトウヨ」と連呼すると、「こいつ単にネトウヨって言いたいだけの単細胞じゃねえの?」と、いくら良い事を言ったとしても疑いの目が向けられてしまうだろう。
また、無意味に使い過ぎると「言葉の意味が薄れる」という点も考えられる。 例えば「オタク」という単語は、そもそもは「マニア」という意味合いではなかった。誕生当時はマンガ・アニメ・鉄道......といった狭い分野に妙に拘る人間が、二人称に「おたく」を用いるケースが目立ち、それが余りに特徴的だったため、その手の人間を「おたく」と呼ぶ事が定着した。ただ、その際に「アイツはコミュニケーション能力に問題がある」という蔑みが必ず付加されていたのだ。
他者との関わり方に難があり、相手の顔を見て話が出来ないとか、スマートに話し掛けられないタイプの人間が、「キミ・アナタ・お前」といった一般的な二人称を上手に使えず、伏し目がちに、そして何故か判を押したように口元を押さえながら、「おたくは○○はどうなの?」「おたくの××中々いいね」といった具合に、ボソボソと短い言葉を交わし合う。その姿があまりに気持ち悪かったため、蔑称として「おたく」という単語が成立したのである。
だが今ではカタカナ表記の「オタク(=マニア)」という単語が乱用され過ぎたせいで、軽くて明るい言葉となってしまった。元々は精神異常者を指すも同然だった「オタク」ですらこうなってしまったのだから、「ネトウヨ」も近い将来そうならない保証はない。
こう考えていくと、「ネトウヨ」(という単語)を生み出したのも、それを意味の薄いどうでもいい単語にしてしまうのも、「ネトウヨを批判したい側の人間」である事が解るだろう。もしアナタが 「ネトウヨ」を「ネトウヨ」と批判し続けたいのであれば、安易なレッテルとして「ネトウヨ」という単語を使ってはならないのである。
Written by 荒井禎雄
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