ある日の早朝、新宿・歌舞伎町の花道通りを歩いていた。花道通りとは、区役所通りの歌舞伎町交差点を旧コマ劇場へ向かう通りだ。朝まで飲んでいた人が始発に乗るために歩き出していた。そんな中で、ある一角で何やらもめている一群があった。近くにいた馴染みの客引きに聞いてみた。
「(キャバクラの)店側と客のトラブルで、支払いを巡ってのようです。お客さんが8人でラスト1時間だけで、請求額が200万円だというのです」
8人で1時間200万円だと!?
歌舞伎町のキャバクラでラスト1時間だけなら、通常1セット1万円。仮に、キャバ嬢が3回転したとする。その3人の嬢すべてにドリンクを出したとする。1杯2000円だとしても6000円。そのうち1人を指名したとして指名料が3,000円。190,000円。そこに税とサービス料がつく。30%だとして24,700円。8人の客が同じ遊びをしたとして、197.600円となる。約20万円だ。
請求額は200万円なので、相場の10倍。単純に計算ミスではないか? と思いたくなる。そこで客側もクレームをつけた。普通はそう考えるだろう。しかし、店側はミスではないと言い張る。いったいどうやったら、相場の10倍の値段になるのだ?
ちなみに、東京都には「ぼったくり禁止条例」がある。ぼったくりとは、不当な請求を言うが、条例では「料金等の表示義務」が課されているものの、料金自体の上限などを決めているわけではない。私もかつて居酒屋で3人で飲んだ。1時間後に清算をしたら、10万円を請求されたことがある。この当時はまだぼったくりを禁止する条例がなく、あとでメニュー表を見せらると、計算上は10万円となっていた。
しかし、最近のキャバクラでは「ぼったくり」と言われないために、入店時に料金の説明があるところがほとんどだ。不当さを感じても、説明されていれば文句は言えない。件の店ではそうした説明があったのかはわからない。
そんなことがあるのか......と思って、友人たちに話をするときにネタの一つにしていた。すると、同じ店と思われるキャバクラに行った友人がおり、1時間で40万円を請求されたという。
「10万だけは支払った。残り30万は不当だと思うので、払いたくないと拒否した。しかし、同時に未払いとして訴えられて、いま裁判している」
最近では歌舞伎町は明るいイメージがあるが、ぼったくり被害がある。フリーの客引き(特定の店舗の従業員ではない)がすべて悪い訳ではないが、冒険心がある夜でも、なるべく正規の従業員がいる店にしたほうがよいだろう。
【関連記事】「借金抱えた奴らの腎臓は600万円」ブローカーが語る臓器売買の闇
Written by 渋井哲也