関西の飲み屋街を中心に、たった4~5年の間で数億円とも言われる金をまきあげた男がいる。いや実際には、「おごってもらう」ことが手口なので直接的な罪には問われないが、被害にあった人々は詐欺や強盗にあったような気分だという。被害者である、飲食店経営者の男性はこう証言する。
「最初はエエ奴やと思ってたんや。初対面のときから、ワシのことを『社長! 社長!!』言うて、立ててくれるしやな。そら、気分がええからおごるわな。それがアカンがな。最後のほうは色々と金出して......」
この男性によると、出会った頃は飲み代だけをおごっていたが、互いに打ち解けていくと携帯電話料金やマンションの家賃なども支払っていたという。どうして、なんの関係も無い男にそこまでしてやったのか。
「とにかく一緒におったら楽しいねや。ほんまにおもろいことを言うし、話も聞いてくれるから気分はええわな。本人は有名噺家Bの13番目の弟子やと言うとった」
飲み屋街で数億円という金をまきあげたとされる、その男は「桂散々(さんざん)」という芸名を勝手に名乗り、羽振りのいい社長連中に声を掛けては詐欺まがいの行為を繰り返す「噺家サギ師」だったのだ。
「マンションの家賃まで払うのはおかしいなと思って、話するつもりで散々の家に行ってみたんや。ほんだら、ぜんぜん知らん人が住んでんねん。あいつは、家賃をそのまま自分の金にしとったんやろうな」
その事実を知った男性は、すぐに散々を呼び出し問い詰めたが、さすが相手はサギ師だけあって巧みな話術で、最後は許してしまったらしい。
「あのときはどうかしてたんやろな。逆に疑うこっちが悪いみたいな心境になってな......。でもその日から、散々とは音信不通やがな」
その一件からしばらくして、散々は関西から姿を消した。数多くの人たちから、少しずつ金銭をまきあげて、数億円は持っていると噂される桂散々はどこへ逃げたのだろうか?
散々の行方を探していると、意外な場所から目撃情報が寄せられた。
「よう来てました。元噺家やって言うて。とにかく、人の金で酒を飲む人でした」
ここは噺家たちが集まることで有名な飲み屋だ。店の主人の話によると、散々は、毎日のようにやってきては、ほかの客にたかっていたらしい。主人に、噂の数億円についてたずねてみた。
「数億円? それは無いんとちゃいますか? 服装も汚かったですしね。それにね、一緒に住んでた女に金を持っていかれたとか言うてましたわ。まあ、いくら持っていかれたんかは知らんけど、たいしたことおまへんやろ」
その店から数分のところに散々が住んでいたという。さっそく向かってみると、廃墟のようなアパートがあった。主人の話によると、散々はそのアパートの部屋で布団にくるまるようにして、死んでいたという。
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Written by 村上茜丸
Photo by グリフターズ/詐欺師たち
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