釜ヶ崎のおっちゃんとわたしが終わらせないでいる日常|成宮アイコ

不鮮明なモノクロ写真の裏に見つけた文字

田無駅につき、図書館司書の方に郷土資料について聞くと、

「陸軍について…なんだか聞いたことはありますけどね、でもそれって、夏にありがちな怪談話としてなんですよね」

申し訳なさそうな顔で、だんだんと小声になりながら答えてくれました。それでも蔵書の中からいろいろな文字で検索を続けます。しかし、やはり何も手がかりはつかめず。

話が長引いているわたしたちを心配して、別の司書の方も加わってくれました。

「世田谷とか…多摩市のほうにも跡地があるらしいですけど、タマシじゃなくてタナシなんですよね?」

あおさんは少し弱気になっていました。

「もしかして聞き間違いかもしらんけどなぁ、なにせもう本人たちもいないし聞けないから」

そんなやりとりを隣で見ていたわたしは、手のひらにじわっと汗がでる感覚がしました。見つからないかもしれない覚悟で来てはいるけれど、見つけないわけにはいかないんだ。誰のせいでもないのに、焦りでイライラした顔になっていたと思います。