釜ヶ崎のおっちゃんとわたしが終わらせないでいる日常|成宮アイコ

なんだか、なにかに気がつきそうなざわめきを感じたので、いつもの倍くらい大げさに喜びながら店内に入り、ホッピングシャワーとキャラメルリボンを買ってもらいました。

初めて訪れたひばりヶ丘の駅前を見渡します。だいすきなサーティーワンアイスクリームの看板の蛍光ピンクはいつも同じ。どの町に行っても同じ蛍光ピンクです。

家の近くにもあるチェーン店の居酒屋さん、物珍しい私鉄の模様、知らないバンドのライブ。平和で代わり映えのない、見わたすかぎり広がる日常の風景。どの街でも、どの駅でも同じ、見慣れた景色です。

あおさんのお父さんとお母さんは、SNSやLINEのない時代、文字が読めないから手紙もかけないならば、また離れるときはどのくらい不安だったでしょうか。いまの風景はこんな風になっているんですよ。いつかの場所は、いま、こんな風に日常が広がっているんですよ。みんなが自分の生活を暮らしているんですよ。当たり前のように未来の約束がされて、アイスを食べながら当たり前のようにそれを聞いているんです。

こんなにもです、こんなにもですよ。

あおさんは嬉しそうにわたしをながめます。

「母親のお墓に行ったら、東京に四女ができたって教えたるわ」

このコラムの冒頭で友人と書きましたが、わたしたちはちょっといびつな親子のようでもありました。

あおさんは、内向的なわたしの性格をいつも心配していて、わたしは、時々お酒を飲みすぎるあおさんの体調を心配していました。あおさんのご両親には会ったことがないけれど、頭の中で話しかけては泣きたくなるような気持ちを色どりどりのホッピングシャワーでおさえつけました。