村西とおる監督を描いた『全裸監督』がNetflixでドラマ化 著者の本橋信宏氏と対談|平野悠

本橋:ところがこのころは、村西とおるは鳴かず飛ばずで。北海道ロケにやる気のないAV女優4〜50人連れていったりして。低調な時代だったし、わたしの中では、「もう書き切ったかな」と思ってたんですよね。このときの模様は、「M 村西とおる狂熱の日々」という映画で記録されていて、おそらく2019年公開になると思いますけど。宝島社の編集者が後に太田出版に移籍して、そこで20年越しであの本が誕生したわけです。

平野:それで『全裸監督』がまた映像化になるんでしょ? しかも、インディーズじゃないんでしょ?(笑)

本橋:人類史上はじめての億単位の視聴者数がいるNetflixですよ(笑)。

平野:はーーーーー、す・ご・い・ですねぇ。

本橋:『裏本時代』とかにも映画化の話ってけっこう来てたんですよ、でも映画ってなかなか現実化しない。

平野:アハハハ! わかるわかる(笑)。俺もそういう経験ある。

本橋:今の映画っていうのは委員会を立ち上げてファウンドを作るんですけど、リーマンショック以降は企業もお金に余裕がないから、いいところまでいってもダメになちゃうんですよ。もう映画はいいよ、と思ったら、Netflixはいきなり予算もOKで。

平野:億?

本橋:年間予算で1.4兆円なんですよ。世界で、ですよ。だから制作費の問題は最初からクリア。あと、クライアントのタブーもないし、大きな事務所の圧力もないし。今の映画監督はみんなNetflixで撮りたいって言ってますよ。地上波のカリスマ・明石家さんまさんがNetflixのCMをやっているくらいですから。だからもうお任せします、って。

平野:ほうほうほう。…で、どのくらい本橋さんは取れるの? 何パーセント?

本橋:億単位だったらこんなとこ来ませんよ(笑)。カリブの海とかにいますよ。

平野:アハハハ! バカンスしてるよな。

本橋:いやー、でも作家はきついですわ……。みんなよく食べてるなって、エロ本業界はもう壊滅ですから、特にカメラマン。昔は4,50誌あって、そこでパパっと撮って、はい次って使い回せば十分メシ食えましたけど、今撮り下ろしなんてないじゃないですか。カメラマンは廃業、編集者も転職や移籍、ライターも消えちゃって。

平野:出版社もなくなるし。

本橋:音楽業界とエロ本業界は似ていますよ。今までは既得権益というか、女の裸さえ載っていれば売れたんですけど、その時代は終わったんですよね。甘かったですよ。仲のいいライターやカメラマン、デザイナーでまわしあっていたから、有能な人が埋もれちゃったんだよね。