村西とおる監督を描いた『全裸監督』がNetflixでドラマ化 著者の本橋信宏氏と対談|平野悠

杉山会長、村西とおる監督……

平野:僕は本橋さんと会ったのは95年で、ちょうどオウム事件があったんですよ。その次の年には、サカキバラ事件があって、社会が混沌としている時代だったんだよね。本橋さんはオウムにはハマらなかったんですか?

本橋:いや、関心はありますよ。いまだに関連本も読んでいるし。でもわたしは、あんまり宗教が好きじゃないんですよね。

平野:酒鬼薔薇事件や宮崎勤の猟奇事件は?

本橋:事件は大好き、というと語弊がありますが、書いてますよ。実話ナックルズ(ミリオン出版・大洋図書)で5~6年連載もしていましたし。いまも「東京裏23区紀行」というのを同誌で連載してますし。オウムも、やっぱり関心はあって、最初にあやしいなと思ったきっかけがあったんですけど…『借金返せにゃ腎臓を売れ』っていう本を出した杉山治夫会長っていらっしゃったじゃないですか。

平野:ありましたねありましたね、杉山会長! むかしプラスワンに呼びましたよね。あのころは、ああいうことがいっぱいあったんだよ。

本橋:いやぁ、よく出てきましたよね。

平野:よく出てきたって、あんたが呼んだんだろ!(笑)

本橋:そうそう(笑)。杉山会長、実はあのころってお金がないころで、羽振りのいいときは怒ると現金1億円を空高くばらまくんだけど、あのときはそれでも客席にお金を5、6枚撒いてくれましたよね。義理堅かった。

平野:アハハハ! あのビデオまだあるんじゃないかな。話がつきないな(笑)。

本橋:でね、以前杉山会長に取材したとき「若い愛人もいて、こわいものなんてないですね」って言ったら、「ひとつだけこわいものがあるんや」って言うんですよ。

平野:ほう。

本橋:「なんですか? どこの組ですか?」って聞いたら、「オウムや」って言ったんですよ。それが93年ころの話で、まだ一連の事件が表沙汰になる前ですよ。なんでオウムがこわいのかなと思ったんだけど、「つれさられて、消されてしまう」ってわけのわからないことをポロッと言っていたんですよ。あれはたぶん、裏社会ではすでにオウムの犯行というのが出回ってたんですよね。覚せい剤ルートも疑われてたじゃないですか。

平野:本橋さんはそのあたりで、二木啓孝とか江川紹子さんみたいに華々しい取材はしていなかったよな。二木さんは公安とも繋がってたから。

本橋:公安も裏社会もオウムは厄介だって知っていたんですよね。『弁護士一家を知りませんか』っていうパロディAVがあるんですよ。監督がオレンジ通信の元編集長で。プロデュースの村西とおるが、「お? きみはなんだか麻原によく似ているなぁ」って言い出して、麻魔羅少将って監督名を付けさせられて、オーメ真理教という新興宗教で性のイニシエーションを卑弥呼や田中露央沙に施したんですよ。実際に上九一色村まで行って撮影して。

平野:アハハハ! わざわざ行ったんだ。

本橋:そのころって「オウム冤罪説」がまだ流れていたんですよ。でも、やっぱりやってるだろうと。結果的にはあのパロディAVは先見の明があったわけです。

平野:さて、じゃあ話もでたところで、村西とおるの話を。