村西とおる監督を描いた『全裸監督』がNetflixでドラマ化 著者の本橋信宏氏と対談|平野悠
平野:その世代が終わって、第二世代のカンパニー松尾が「テレクラキャノンボール」っていう大作を引っさげてきて。いま、第三世代っていうのはあるんですか?
本橋:最近は見てないけど、いまはセルビデオというより配信の時代ですからね。プロの監督というよりも素人のほうがエグいですよ。素人のハメ撮りだとかネットの動画サイトに溢れてますから。
平野:そういうのはどこで調べるの? 別におれの趣味じゃないよ、読者のために聞いてるんだよ! いまいちばんおもしろいっていうのはxvideo?
本橋:あー、大物のパソコンのお気に入りに入っていたxvideo。
平野:アハハハ!
本橋:検索ワード打ち込めばなんでも出てきますからね。
平野:やっぱり第二世代の、バクシーシ山下やカンパニー松尾の人気はすごいよね。ロフトプラスワンができたことで、今まで裏にまわって作っていた側に日の目が当たるっていうのはあったと思うよ。隠れたり恥ずかしい仕事っていう意識がなくなったよね。
本橋:そういうアンダーグラウンドの住人に発言の場をあたえたり、阻害されてきた論者にチャンスを与えたのが平野さんのロフトプラスワンでした。
平野:発言を封じられたり、無視された人をどんどん舞台にあげていったことが、ロフトプラスワンの成功だったんだろうな。
本橋:最初に塩見さんから「ロフトプラスワンに来てくれ」って言われて、新宿ロフトは知っているけど、ロフトプラスワンってなんだろう? って思いましたよね。でもインディペンデントの発言を居酒屋でやるのはおもしろいなぁと思いましたね。
平野:そうなんだよ、勲章もんだよ。Netflixで儲けた分を分けてくれよ。こどもを大学にいれるとか、あ、村西さんのこどもは超名門付属小学校に入ったんでしょう?
本橋:信じられないですよね。なんかもっているっていうか、金運や仕事運には見放されたけど、その分、家族運には恵まれましたよね。
宅八郎と田中康夫
平野:田中康夫と宅八郎は付き合いあった?
本橋:わたしが「噂の真相」で書いた原稿を、宅八郎が気に入ってくれて、会って意気投合したんですよ。ちょうど宅さんがワイドショーで追われているときで、1ヶ月くらいうちに避難してたんですよ。
平野:宅さんが!?
本橋:朝起きると隣に宅八郎。
平野:アハハハ! やだなぁ。でも文章が面白いんだよな。
本橋:いや、最高ですよ! ほんとうに。あの文章はほんとうにおもしろいです。また彼の連載、読みたいですよ。
平野:文章は読みたいけど、関わりたくないっていう、これは悩みだったよね。「SPA!」の編集も頭かかえてたよ。
本橋:田中康夫さんの「東京ペログリ日記」は名著で、宅さんからうけている攻撃を淡々とハードボイルド調に書いてて、あれもかっこよかったですよ。たいへんだっただろうけど、タフだよね。ハブとマングースみたいな。あのふたり、どっちも好きですよ。
平野:歴史に残る時代だったよな。20年前のことか、この20年間になにかあった? なにもないよな。
本橋:それはね、平野さんがマヒしちゃってるんですよ。刺激は慢性的に与えられると不感症になるので。