六本木フラワー事件現場
元関東連合幹部、石元太一氏は現在「六本木フラワー事件」(2012年9月、六本木のクラブ「フラワー」で関東連合メンバーが一般人を敵対相手と勘違いをして撲殺した事件)の主犯格として刑務所に服役中です。
今まで、二通の手紙をやりとりしました。この事件を契機に関東連合、怒羅権を始め、元暴走族が次々と半グレから「準暴力団」と警察庁に規定されました。
現在、石元氏が何を思い、何を訴えたいのか。石元氏と担当弁護士の許可を得て、本サイトで一部、公開したいと思います。「お忙しい中、いつも手紙ありがとうございます。久田さんの手紙にはいつもいろいろと考えさせられます」から始まる手紙は関東連合内のことも書かれていましたが、刑務所内での待遇についてここではフィーチャーしてみます。(久田将義)
石元氏からの手紙
刑務所内のことをよく聞いてくれました。三浦さん(註・ロス疑惑の故三浦和義氏)、川口さん(註・東組川口和秀氏)の名前は、今回逮捕されてから何度も耳にしました。お二人共、理不尽なことは決して屈しなかった方のようで。
私は今まで少年院しか入院したことがなかったのですが、刑務所も監獄法改正後は少年院と同じように矯正教育に力を入れているものだと思っていました。しかし実態は再犯防止の為の矯正教育など全くといっていいほど行われておらず、私が社会にいた頃に想像していたものと全然違っていました。世間の方もそれを知ったらきっと驚くことかと思います。
特に、工場の担当刑務官達が冗談を交えながらもすごく考えさせられること、為になることを話してくれますが、それを聞き手側は真剣に受け止め、自分なりに咀嚼する必要があります。
しかし、少しひねくれてしまっている受刑者や物事をあまり深く考えることの出来ない受刑者にはその言葉は届きません。他に月に2回、矯正指導日という日が設けられていますが、ただ放送されているDVDやラジオを視聴するだけ。それを視聴したものについてはの感想文を書くのも、月に一度あるだけです。
そんなのが本当に矯正教育になるでしょうか。少年院では月に2度進級式があり、その日は担任の職員との面接や成績の通知がありますが(もちろん少年院には他にもいろいろな教育があります)、ここ横浜刑務所でも評価はつけても、その通知は本人にはありません。それでは一体何を評価され、何が問題点として捉えられているのかわかりませんよね。
刑務所に収容されている受刑者の数を考えれば、そのように一人ひとりの受刑者と向き合うのは難しいのかもしれませんが、少し考えればうまいやり方、矯正教育の方法はいくらでも思い浮かぶはずです。せっかく現場で働く刑務官の中には、受刑者に対して一生懸命に接してくれる素晴らしい人柄の人達がいるのに......。残念なことです。これでは宝の持ち腐れです。
また、隠蔽体質的なところも問題だと思います。ここ横浜刑務所では、5月に集団食中毒事件が起きたのに、調査も何もされずに蓋を閉められました。けれどつい最近、別の刑務所では集団食中毒が問題として取り上げられていましたよね(確か京都刑務所だったと思いますが)。その差って一体何なのでしょうか? なぜそういったことが起きた時、隠蔽する刑務所が出てくるのか......。調査しなければ何が原因なのかわからず、解善策(原文ママ)が立てられません。私達受刑者は出されたものしか食べることが出来ないので本当に困ります。
面会に関することもそうです。岐阜刑務所の受刑者が知人との面会許可を求めた裁判で、去年名古屋高裁がその訴えを認める判決を出しました。それに対し岐阜刑務所側(法務省)は、上告をせずにその判決を厳粛に受け止めたはずです。なのに、他の刑務所は無視を決め込み、ここ横浜刑務所も面会に関して締め付けたままです。ならなぜ国側は上告をしなかったのでしょうか?
上告をして最高裁で棄却されてしまったら、法務省から全国の刑務所に通達を出さなければいけなくなるのでしょうか? もし「岐阜だけで済むのなら」「せめて岐阜だけにとどめよう」と考えているのなら腹黒過ぎです。受刑者を教育し、遵法精神を叩き込む側のとる態度ではありません。
そもそも、なぜ全国の刑務所で規則に統一しないのか。「平等」を謳っている以上そうしなけば辻褄が合いません。国は裁量権というものを認め過ぎなのです。そのせいで、法律より刑務所の規則が上になるという逆転現象が起きてしまっています。これは非常に危険な兆候ですよね。過去に名古屋刑務所で起きたようなことを繰り返さない為にも、閉鎖的な態度とこういった指摘をする受刑者に対する報復的な処置を改め、もっと開けた施設運営を目指すべきなのではないでしょうか。
「受刑者には何をしてもいい」と考える方ももしかしたら中にはいるかもしれませんが、そうした考え方が「会社員なら黙って滅私奉公、過重労働しなけれはいけない」「男女平等、女性はこうあるべき」という考えにもつながる気がしてなりません。大げさかもしれませんが。もっともっと人権というものについて考え、意識してほしいです、多くの方に。
このような谷底で生活をするようになり、尚更にそう思うようになりました。
石元太一氏からの手紙は後半へ続きます
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