キモい! 悪質! と大不評の羽生結弦ファン「ユヅリスト」は秘部を濡らしているだけまだマシ!

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 みなさまは「日本三大リスト」をご存知でしょうか。吉永小百合はおしっこをしないと信じる”サユリスト”、村上春樹は次こそ必ずノーベル文学賞を受賞すると信じる”ハルキスト”、そして、羽生結弦の絶対的な勝利を信じる”ユヅリスト”です。

 一節によると”ユヅリスト”の命名は2013年12月22日放送の『Mr.サンデー』(フジテレビ系)で、司会の宮根誠司が勝手に、「羽生選手のファンの方は熱烈で”ユヅリスト”とか言うんですか?」と発言したのがきっかけだと言われ、実際のファンたちは「そんなの初めて聞いた」「やめてくれ」と拒絶反応を示したといいます。

 しかしそんな否定も無情、”ユヅリスト”はその語感のキモさも相まってか、「羽生選手の熱狂的かつキモいファン」というニュアンスを含め、じわじわと浸透。2月21日時点のGoogle検索で「ユヅリスト」の第2検索ワードを確認すると、「悪質」「きもい」といったネガティブワードまで出てくる始末。
 羽生選手の金メダル獲得で沸いた閉幕したばかりの平昌五輪中も、たびたび”ユヅリスト”の名称で報じられてしまっていましたが、これも普通のファンから見たら、「私たちは違う」「あれは悪質なファンの蔑称だ」となっているかもしれません。

 さて、世間が「キモい」とするユヅリストは一体どんなことをしているのでしょうか。

 昨年11月、宇野昌磨選手がスケートリンクを貸し切って練習しているのを不満に思い、スケート連盟に電話突撃→「費用はスケ連から出ている」とスケ連が言っている→宇野ばかり特別扱い許せない! ゆづが稼いだ金でひどい! 日本の恥! ゆづを守りましょう!!
 ――と真偽不明な噂を拡散するなどの、アンチ宇野選手活動。これはたしかに悪質ですね。

 または、会場で場違いなぷーさんのきぐるみを着るとか、新参者が多いゆえに、会場で買わねばならない投げ込むための専用花を普通の花屋で買い持参、リンクに花びらが散らばってしまう、とか、会場前に長蛇の列を作ってしまう、出待ちする、とかが、「悪質」とされています。

 さらに昨年7月に『週刊女性』(主婦の友社)が企画したアンケート「抱かれたい男グランプリ2017」で羽生選手が2位を獲得。「身体の線が美しいので裸体を見たい」「年上として癒してあげたい(40代)」「ゆづくんにいろんなことを教えてあげたい(40代)」などの回答があったことへ、「キモい」と集中砲火を受けていました。

 でもでも、アンチ活動は悪質だとして、それ以外は、テレビを見るだけで満足なファン以外はやりそうなことだし、アイドル的人気があるアスリートに「抱かれたい」と思い募らせ秘部をしっとりさせるのは、そんなにキモいことでしょうか?

ユヅリストなんて可愛い方ですよ!

 わたしはかつて、野球選手のおっかけをしていました。球場には年間100試合以上足を運び、遠征も当たり前。日本シリーズ出場時には球場前に3徹して並びました。そうやってひととおり1軍のおっかけをすると、もっと青田を買いたくなるのがおっかけの性。翌シーズンには二軍選手のおっかけへと進化し、二軍球場に足繁く通いました。

 そこは、ユヅリストなんて可愛いレベルの伏魔殿。練習後、選手は球場から駐車場までは開かれた場所を歩くため、ファンがぞろぞろと群がるのですが、みなお目当てと誰よりも長く喋るために必死。わたしも友達と作戦会議を開き、「敬語だと普通のファンだと思われるから、タメ口でいこう」となって、お茶とポカリを両手に持ち、なるべく気だるげに、野球なんてまったく興味ないようなテンションで「おつかれえ、ねえ、どっちがイイ?」と、選手に上目遣いで話しかけていた死にたくなる思い出を持っています。

 そんななか知り合った、K子さん。いつもスーパー銭湯の館内着のようなムームーを着ていた40代女性です。K子さんは「みのる」という名の選手が好きで、いつも「さっきまた、みのるったら三振取ったあとに私の方見てたんだよねえ」とか「昨日はみのると一緒にパチンコ行ったんだあ」とか、遠い目をしながら教えてくれました。ある日、K子さんが物憂げな顔でこう言いました。

「みのると喧嘩しちゃったの。留守電にこれが吹き込まれててさあ」

 K子さんから差し出された携帯に耳を当てると。

「えー…と、電話されても、困るんで」

 冷たく無機質な、みのるの声。思わずK子さんの顔を見ると、「まったくもう、しようのないやつ」という微笑みを浮かべていました。
 その日、屋外練習場から室内練習場へ、みのるが歩いていたときです。フェンス越しに見ていたK子さんが突然立ち上がり、みのるに向かって全力で100円ライターを投げつけた! みのるに当たった! みのるがすごい形相で吠える! K子さんもフェンス越しに涙しながら罵声を浴びせる! スタッフがみのるを止めに入る! 
 ……今でもその場外乱闘シーンが、スローモーションでリフレインします。断片的に聞こえてきた、みのるの、「このきちがいばばあが!」という声と共に……。
 一方その頃一軍選手は西麻布の高級カラオケ店で女子アナと合コンしているというのに……。

 ほらほら、ユヅリストなんて可愛い方ではないですか。

こじらせるとキモヲタは地下に潜る

 そうやっていたるところに出没する”キモいファン”ですが、わたしが目撃したなかで一番すごいなと思ったのが、ラーメン屋のおっかけです。ちょっと何を言っているのかわかりませんが、ラーメン屋におっかけがいたのです。

 ”頭にタオルで黒Tシャツ着用、写真は腕組みでダシは煮干し”系のラーメン屋へ取材に行ったときのことです。休憩時間に取材のはずが、女性客が1人、カウンターで頬づえをついているのです。

「『ラーメン◯◯』の取材で来た者ですが……」と言うと、「ふぅ〜〜ん」と、わたしを頭から足の先までチェッキング。そして取材中も、店主が言うより先に、「麺は◯◯製麺所だよね?」「煮干しは◯◯産だよね?」と、わたしの方を一切見ずに店主に言います。そのたびに店主は少し困った顔をして、「はい、そうっス」と爽やかに言います。
 そしてわたしが「麺の太さは、これって中太麺というやつですか?」と言ったときです。

「はあ? マジで言ってるのこの人。麺の太さもわからないのに取材って、ねえマスター、この人、本当に大丈夫なの?」

 それから彼女は「そういえば『らぁめん◯◯』の副店長の弟子が川越で店出したって」とか、「つけ麺イベントに出店する『麺屋△△』のイベント用の器、アレはダメでしょ」とか、店主と盛り上がるではないですか。「清宮を日ハムが獲ったって」とか、「いまのゲッツーはダメでしょ」とかと同じようなテンションで。

 きっと彼女も、最初はユヅリストやプロ野球選手のおっかけかなんかだったはずです。それが控え選手になり、さらに社会人選手、さらに趣味が草野球の会社員とかにどんどん潜ってゆき、たどり着いた最果てはラーメン屋。
 ゆづに抱かれるわけがないのはわかってる。でも、ラーメン屋だったら抱いてくれるはず。ほらそういう目で見てみてよ。湯切りで鍛えられた上腕二頭筋。脂でテカるうなじ。「エプロン、使いますか?」という優しさ。「はい濃厚煮干しらぁめんおまちどうッ!」という着丼(アクメ)声。

ね? イケるでしょ? 

 だからあたし覚えるの。麺の太さも製麺所も煮干しの産地も。それで毎日食ってればいつか彼も食えるはず。
 オリンピック連覇でますます手が届かない存在になり、絶望的になっているユヅリストのみなさんに朗報です。今すぐラーメン屋に、GOです。(文◎春山有子)