虎の威を借りる人たち 「オレ、拳銃を仕入れることができるからよ」|久田将義

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 先日、「EXD44」というテレビ朝日系列の番組に出演したのですが、共演は吉田豪君と俳優の小沢仁志さんでした。小沢さんは「ミスターVシネ」「顔面凶器」と言われており、ライターの藤木TDCさんは小沢さんを非常に高く評価。藤木さんのような専門家からも評判が良い俳優です。

 小沢さんは番組内では「トロトロしやがって」というような言葉を発し、「ミスターVシネ」のイメージを崩しませんでしたが、収録の合間では文字通り「兄貴」というような優しい態度でした。好感を持ちました。「おれは喧嘩とか話さないぞ。いくつになったと思っているんだよ(笑)」と言っていたのも良かったです。

 が、反対の人もいます。武闘派,無頼派ぶる人、いわゆる「虎の威を借りる人たち」です。小沢さんは全く「そういった態度」を出しませんでした。「そういった態度」というのは、バックにコワモテが控えていて、それをちらつかせる人々の事です。
 引退した、島田紳助氏などはそうだったようです。現にヤクザとのツーショット写真がフライデーに掲載されました。当時はイケイケでした。が、暴力団排除条例が施行された後、恐らく大阪府警から吉本興業に連絡がいったと思うのですが翌日、島田紳助は引退しました。

 さて芸能人がバックにコワモテをちらつかせたら、今日ではすぐに警察の餌食になります。基本的に有名人を挙げたいのが警察のモチベーションの一つです。
 一般人にもその手の人がいます。こういう人には、全く怖がらないで良いでしょう。警察にすぐ連絡し逮捕してもらいましょう。

 そもそも本当にコワモテと近しい人だったら、そんな事をちらつかせません。僕はたまにこの手の人(虎の威を借りる人)と会ったり、食事をしなければなりません。以前までは、コワモテの名前を出されたら、「その人知っていますよ」と答えたりして、黙らせていたのですが、これも実は愚かな行為です。20年前の事でしたから、まだガキだったのです。

 ですから、そういう人の言っている事はスルーにしました。気の小さな人ほど「コワモテぶり」を語りたがるものです。以前、同業の人間が「俺、右翼の会長と知り合ったから拳銃を仕入れる事ができるからよ」とか、若手に話しているらしいという噂を聞きました。

 痛い。痛すぎる。

 僕より年上なのに可哀そうになりました。気が小さいけど大きく見せるための人の典型です。その論理だと、僕もそうですが、ヤクザ専門誌のライターなど、どれほどの拳銃を入手できるのでしょうか、という事になります。

 自分一人では何も出来ない。それは僕もそうです。色々な人の協力があって、何かを成し遂げる事が出来ます。しかし、逆境に置かれた時、人は一人で行動を起こさなければならない状況になる事があります。

 それは、「怖いけれど誰かに、特にコワモテに頼ってはダメだ、これは一人で動かないと」という状況です。

 結局は人間、一人で動かなければならないのです。いざとなったら立場も捨てて、一人で行かなければならないという覚悟が必要です。虎の威を借りるのは簡単です。しかし、それをやったら一気に評判を落とします。

 自分を「無頼派に見せたい」「武闘派ぶる」気持ちは分からないではないですが、他人から笑われている事に気づくべきでしょう。(文◎久田将義 連載『偉そうにしないでください。』)