淡い期待を抱きながらルノーのお店に行ってきました! 庶民の私がそこで見た光景とは|春山有子

renault.jpgああ…たまらない、憧れのフランス車!(RENAULTオフィシャルサイトより)

 ルノー取締役会長兼CEOであり日産自動車の前会長のカルロス・ゴーン容疑者の逮捕関連報道が毎日のように報じられる中、ちょうど車買い替え時期のいち庶民として安直に思いついたのは、

「ルノー、お安く買えたりするんじゃね?」

 ということ。
 普段、お高くとまっているようなイメージの外車ディーラーですが、これを機に明らかにユニクロ着用の庶民にも歩み寄ってくれるのでは……国産車ディーラーでは個人情報を書かずとも必ずなんらかのお土産をくれたりするけれど、フォルクスワーゲンでは「次回来店時にチョコレート差し上げます引換券」をくれただけだったり、フィアットにいたっては茶も出されなかった……けれど、今のルノーなら……。

 そんな期待を胸に、ルノーのディーラーに行ってみました。

 某日某所、ルノーにうかがうと、意外なことに5つあるテーブルの空きは1つだけ。営業さんも対応に忙しそうです。みんな同じ魂胆なのかなあ? と思いうろうろしていると、手の空いて営業さんが来てくれました。
 おお、やはり国産ディーラーよりもシュッとしている。ダイハツの営業が中日の平田良介選手似だとしたら、こちらは俳優の田辺誠一似です。田辺誠一にお目当の車を見せもらったり説明をうかがいます。

 が、一向にテーブルに案内されない……ずっと立ち話のまま……むしろ、「他のお金持ち客の対応で忙しいから、ひやかしなら早く帰ってくれないかな」といった視線にすら感じます。というのは庶民の被害者意識ですよね。

 ここで早々に、気になるゴーン容疑者のことを聞いてみました。

「あのう、ゴーン的なことって、どうなんですか?」
「はい? ご、ごーん?」
「いや、あの、ゴーンです。会長の」
「ん? ごーん? なんですかそれ」
「いや、だからゴーンです! 逮捕された、今話題の!」
「ああ、ゴーンですね」

 3回言ってやっと通じた。筆者の滑舌が悪かったんでしょうか。ゴーン、そんなに難しくない響きですが、不思議です。すると田辺誠一は「ふんっ」と鼻で笑いこう言いました。

「マスコミが騒いでいますが、ま、ルノー自体は何の関係もございません。日産のグローバル本社の方にも話を聞きましたが、外は常にマスコミがうろうろとしているようですが、社内は静かなものだそうで。通常どりの業務をしているそうですよ」
「じゃあ、車が壊れて修理してほしいとなったとき、ルノーさんが日本から撤退していて、直せない……なんてことは?」
「ない、ですね。あっはっは」

 田辺誠一は高らかに笑います。その後、試乗させてもらったり、説明を聞いたり、なんやかんややっている1時間の間、筆者たちのテーブルには茶はありませんが、あとから来た品の良いフランス人夫と日本人妻のご夫妻には、さっさかさーーーと茶が出されています。

 それから見積もりを出していただく段階になり始めて、「コーヒーなどいかがでしょうか?」と、やっと打診。さらに1時間ほど見積もり算出で待たされたあと、いきなり田辺誠一のテンションにターボがかかるではないですか。

「今ならキャンペーンで一番高いナビを安くつける」
「今月中に決めてほしい」

 まるで鬼営業で有名な不動産会社オープンハウスのような勢いに、たじろぐ筆者たち。さきほどの余裕の態度はどこへ行ったのでしょうか。

 帰り際、筆者の子どもがショーケース内のルノーのミニカーに反応を示します。きっとダイハツで味をしめたのでしょう。同じような反応をダイハツディーラーで示したとき、営業の平田良介選手は、

「余っているので、ぜひもらってやってください」

 と、笑顔でミラ・トコットのミニカーを2つもくださいました。「契約が成立したら差し上げます」と書いてあるのにもかかわらず。これが可愛いこと可愛いこと!

 一方の田辺誠一は。

「それは差し上げられません。HPで購入できますので、ぜひ」

 代わりにルノーオリジナル塗り絵をいただいてしまいました。恐縮です! と思って中を見ると、塗り絵は1ページだけで以降は白紙でした! やったー絵を描き放題!

 翌日、筆者家族の携帯に、鬼電話が鳴り響きます。仕事熱心な田辺誠一からの着信でした。でも庶民は、出ない。庶民は、タダでなんかくれる会社に、めっぽう弱いから……。

 ともあれ、ゴーン容疑者がどうなろうが、品の良いお金持ちファンがいる限り、ルノーブランドがビクともしないことがわかった1日でございました。(文◎免許を持ったことがない春山有子)