麻原彰晃の遺骨は誰の手に? 死刑執行は幕引きにならない 死してなお脅威となり得るオウム教祖の行方

2018年07月07日 オウム真理教 教祖 死刑執行 遺骨 麻原彰晃

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 オウム真理教教祖・麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚を含む教団元幹部7人の死刑が執行されました。ここでは「教祖麻原の遺体・遺骨は誰の手に渡るのか」に注目します。

 まずは死刑囚の遺体がどう処理されるのか、から見ていきます。
 死刑が執行されると、法務省は遺族に遺体引き取りの意思を確認します。遺体が引き取るなら、遺族が荼毘に付します。死刑囚の遺体・遺骨を国が強制的に保管・所有することはなく、凶悪犯であっても遺体は遺族のもとに渡るのです。遺体が引き取られない場合などは、国費で火葬され簡易な葬儀が行われます。遺族がその遺骨も引き取らない場合、法務省により無縁墓に安置されます。
 実はこれまで、ほとんどの死刑囚遺族は遺体も遺骨も引き取りを拒否しています。少しでも平穏な日常をと願う遺族にすれば当然の反応かもしれません。

 しかし、松本智津夫死刑囚の場合はそうならないでしょう。遺された者にとって引き取る「価値」があるからです。では、誰が遺体を引き取るのでしょうか。合法的な範囲で考えてみます。


聖地創造のための遺骨争奪戦が始まる


 遺体は法律に則って火葬されます。そしてその遺骨は、民法上、祭祀主宰者に所有権があると解されます。
 祭祀主宰者には優先順位があり、1・被相続人(松本死刑囚)の指定により決める、2・慣習に従って決める、3・家庭裁判所が決める、となっています。

 1は、松本死刑囚による遺書などがない限り指定されません。指定がないなら2の「慣習」によります。含みのある表現ですが、「喪主になる人」ということです。
 松本死刑囚には4人の女性との間に13人とも15人とも言われる子供がいますが、喪主となる人物としては、妻の松本明香里(松本知子)、当時教団ナンバー2に祀り上げられた三女の松本麗華などが有力でしょう。遺骨の存在は教団内での勢力争いに直結するとも言え、遺族間で遺骨の相続が争われるかもしれません。

 現在、オウム真理教は、ひかりの輪、Aleph、山田らの集団(公安による仮称)の3つの後継団体に分裂しています。
 なかでも早くから主流派と袂を分かち、ひかりの輪の代表を務める上祐史浩氏は、死刑執行後の会見で「ひかりの輪の信者に麻原への信仰はないこと」を強調しつつ「Alephは未だ麻原を絶対とする妄信の中にある」と述べました。山田らの集団は、より狂信的との報道もあります。教祖麻原の遺骨を「聖なる遺物」と捉えかねない者たちです。
 たとえ「遺骨を神聖視しない遺族」の手に遺骨が渡っても、狂信団体側が遺骨の入手を法的に訴える手段はあります。遺骨の引き取り手とは別の遺族と組んで遺骨の所有権を主張したり、分骨を願い出る裁判を起こす方法です。彼らが遺骨を手に入れたら、仏教徒にとっての仏舎利のような聖地を創り出すかもしれません。

 もちろん、遺体だろうと遺骨だろうと、力づくで強奪する手段をとりかねない団体です。そのため警視庁は、松本死刑囚の遺体を遺族に受け渡す際の警備を強化しているようです。


「松本智津夫はテロリスト」の認識でいいのか


 上川陽子法相は死刑執行直後の会見で、オウム真理教を"宗教法人を隠れ蓑にして"凶悪な事件を起こした、と評しました。どうも国側は、麻原およびオウム真理教を宗教団体というよりテロリスト集団として見ているようです。

 この認識でいいのでしょうか。ただのテロリスト集団なら死刑で幕引きできるかもしれませんが、察するに、そう簡単ではなさそうです。

 むしろ、教祖麻原が死んだことで、危険な狂信的信者は遺骨崇拝や聖地創造など活動を強めるかもしれません。松本智津夫は、死してなお、私たちの脅威をもたらす「厄介な宗教者」なのです。国も、公安も、私たちも、その亡骸の行方には注視しなければなりません。(文◎東康)

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