中国にスポーツ大国というイメージを抱く人は少なくないだろう。2008年には北京オリンピックを開催したばかりだし、そうでなくともオリンピックではいつも獲得メダル数でトップを争っているような印象がある。夏季五輪では、過去9回の出場で金201個を含む473個のメダルを獲得している。
では、冬季五輪ではどうだろう。参加回数は同じく9回だが、メダル数は金メダル9個を含む44個とずっと少ない。とはいえ、日本はといえば参加回数は中国の倍にあたる19回だが、獲得したメダル数は金メダル9個を含む37個。日本より参加回数が少ない中国のほうが多くのメダルを得ている。
ソチ五輪にも66人の選手が参加(ちなみに日本からは113人が参加)し、私たちも数多くの競技で、中国選手たちの活躍の姿を目にしている。だが中国では、冬季五輪に対して、夏季五輪ほどの熱狂はないように思われる。中国在住者に尋ねても、静かなものだという。
これは中国での五輪の扱われ方も影響しているのかもしれない。中国のテレビは基本的にはケーブルテレビで(なければ映りが悪い)、たとえば北京ではチャンネル数は50ほどに上る。まず、中国中央テレビ(CCTV)が十数チャンネル、北京テレビのチャンネルがやはりそれくらいあり、さらに各省級テレビ局の放送も入ってくる。CCTVも北京テレビもそれぞれにスポーツチャンネルを持っており、普段からありとあらゆるスポーツを放送している。
それなら好きなだけ五輪競技の中継ができると日本人なら思ってしまうかもしれないが、中国では五輪中継はほとんどがCCTVの第5チャンネルのみで行われる。それも、五輪一色にはならない。そのほかにも南米サッカーのコパ・リベルタドーレスの試合や、米国で開催中のプロのロデオ大会や、ワールドストロンゲストマンコンテストが放送されていたりする。
そして、その他のスポーツチャンネルは、五輪にはまったく触れず、欧州サッカー、国内サッカーなり、NBAの試合なりを終日放送し続けている。他のチャンネルでは普段通りにテレビ番組が放送されているため、CCTV5にチャンネルを合わせたり、ニュース番組で金メダリストに関する報道を見たりしなければ(中国では金メダル以外のメダルは注目されない)五輪が行われているという実感はわかないかもしれない。
そんな中国だが、実は2022年の冬季五輪開催を狙っている。会場は河北省の張家口と北京で、すでに昨年11月に申請は済ませている。ライバル都市はノルウェーのオスロ、ポーランドのクラクフ、ウクライナのリヴァウ、カザフスタンのアルマトイだ。ソチ五輪閉幕直後の今年3月には申請ファイルの提出が締め切られ、7月に一次選考が行われる。
中国のメディアによれば、フランスのある企業が全国の2500人を対象に行った調査の結果、冬季五輪開催を支持する人は北京では91.8%、張家口市では99.5%で、全国では94.8%に上ったとされる。いまの中国で普通に抽出調査をしてそんな数字が出るとは思えないのだが、とにかくそれほど高い支持を得て申請しているという。
しかし、2018年の冬季五輪は隣国韓国の平昌で開かれることがすでに決まっており、さらには2020年の夏季五輪もこれまた隣国日本の東京で開かれる。普通に考えると、2022年の開催権獲得は難しそうだが、あるいは2022年は小手調べで、本命はさらに4年後の2026年、あるいは8年後の2030年ということもあるかもしれない。
最近になって、経済的に豊かな都市部では、フィギュアスケートなどの競技が注目さてきており、すでに実績もあげている。だが中国は広く、地域による経済格差は大きい。ウインタースポーツに適している東北部や内モンゴルといった地方は経済発展がまだ進んでおらず、高いコストがかかるスキーやスケートはなかなかすそ野が広がっていない。選手の育成にもまだまだ時間がかかるだろう。
だが、最大の問題はそういったことではないだろう。中国の環境汚染はいまや、世界中の知るところとなっている。中国メディアの記事によれば、張家口は中国長江以北で最も大気汚染が軽い地方だというが。中国の次なる悲願がかなうのはいつになるのだろうか。
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Written by 劉雲
Photo by tpower1978
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