徴兵選抜検査があったことを報じられた(新聞posttodayより)
徴兵制のあるタイでは、今年も徴兵選抜検査が4月1-12日に全国で行われました。男性532,277人が参加し、うち104,734人が徴兵されています。
タイ国籍を持つ全男性は21歳になると登録した自治体で徴兵選抜検査に出頭しなければなりません。選抜検査会場ごとに徴兵人数が決まっていて、もし自ら兵役に志願する人数が必要人数を超えていれば、残りの人は徴兵を免れることができます。
しかし志願者が必要人数に満たなかった場合、運命のくじ引きが待っています。箱から引き当てたのが黒札だった場合は、晴れて徴兵免除。赤札を引いた場合には有無を言わさず徴兵決定です。札に配属先まで書いてあります。
もちろん大学生だったり仕事の都合で無理という場合には1年間猶予されますし、僧侶等の場合も免除されます。しかし大部分の男性にとっていつかは参加しなければならない人生の大イベントなのです。そのため毎年さまざまなドラマが生まれています。
徴兵されたくない大半の男性は、あの手この手で免れる手段を考えるのですが、もっともポピュラーなのは神頼みですね。寺や廟に参拝して首に霊験あらたかなお守りをぶら下げてくじ引きに挑むわけです。
そんな中、今年はちょっと風変わりな願掛けが話題になりました。とある会場で徴兵くじ引きに臨んだ男性の首には、一枚の写真がぶら下がっています。全国的大人気の女性アイドル・グループBNK48のメンバー、プーペー(20)の生写真なのです。プーペー推しの男性の運命は...、見事黒札で徴兵免除!「プーペーのご加護のお陰」と男性。来年の徴兵くじ引きには、彼にあやかろうと、プーペーの生写真を首に下げた男性が大勢見られるかもしれません。
「プーペーのご加護」で救われた男性(新聞kapookより)
この子がプーペ―です!
徴兵検査では男性は上半身裸になって身体検査を受けるのですが、マッチョで厚い胸板を見せてくれる男性タレントの姿が、毎年女性の楽しみにもなっています。今年はコンケーン県の会場に男性歌手シントー The Star が現れ、逞しい身体を披露してくれました。引いたくじは、やはり黒札。ファンはホッとしたことでしょう。
シントーの美しい肉体(新聞kapookより)
ぎょっとするニュースも南部地方ヤラー県の会場から入ってきています。この会場では兵役志願者が必要人数に達したためくじ引きが実施されませんでした。このように兵役が人気な地域もあるんですが、軍も喜んでばかりはいられなかったのです。尿検査を実施したところ、会場に出頭した500名余りのうち110名の尿からドラッグ使用の陽性反応が出てしまいました。実に4分の1の人数。尿検査があることが分かっているのになんでまた?
最後はお待ちかねのお色気を。男性しかいないのにナゼといぶかる向きはまだ甘いです。ここはオカマ天国タイ。オカマだって住民登録上の性が男性なら徴兵選抜検査には出頭しなければならないのです。
東北地方ナコンラチャシマー県の会場に現れたのは、バンコクのラムカムヘン大学法学部生のアンノーイちゃん。ミス・レディーボーイ・コンテストで準優勝した経歴の持ち主です。性転換手術済みで豊胸手術もしているアンノーイちゃんに徴兵審査員と身体検査医師は、出生時の性と一致しない性の状態のため徴兵くじ引きに参加不要との判断を下し、見事徴兵を免れたのでした。
法学部で学ぶアンノーイちゃん(新聞posttodayより)
さらに東北地方ロイエット県の会場には、2017年ミス・ティファニーのヨシちゃん(21)が出頭。しかし18歳時に保護者の同意を得て性転換手術済みで、出生時の性と一致しない性の状態と軍担当者が判断。こちらもくじ引き不要という結果に終わりました。本人は「住民登録上は男性なので、たとえくじ引きをしなければならなかったとしても法律に従うつもりで来ました。国に奉仕する徴兵のくじ引きへの参加義務を果たし国民の模範となりたかったんです」と語っています。素晴らしい!
2017年ミス・ティファニーのヨシちゃん21歳(新聞kapookより)
こうして悲喜こもごもの中、今年の徴兵選抜検査は無事終了しました。来年もまた話題を山ほど提供してくれることを期待したいですね。(取材・文◎赤熊賢)
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