写真はイメージです
親族や行政から何度説得されても土盛りに掘った穴に暮らし続ける男性が話題になっています。
タイ北部ピチット県。見渡す限りの田園地帯に流れる運河沿いのこんもりとした盛り土の内部にその男性(70)は猫2匹とともに暮らしています。
盛り土には生活ができるスペースの穴が掘られ、木製の担架がベッド代わりに置かれています。盛り土上部には雨除けのためのビニールがかけられ、横には通気口の小さな穴も開けられていました。
男性はこの地出身で、昔バンコクやラオスなど多くの土地で働いた経験があるものの、町暮らしは煩わしいことばかりだと感じて故郷のピチット県に帰り、当時まだ森だった兄弟所有のこの土地で盛り土に穴を掘って生活を始めたのでした。
孤独が好きで集落の誰とも関わりたくない男性は、人が通ると穴に隠れる生活を何十年も続けて来たのです。
服を着るのも嫌いでハーフパンツ1枚で毎日過ごし、食生活も自ら野菜と稲を栽培して自炊。肉は食べず、野菜を生か茹でて食べています。生のコーヒー豆が好物。トイレは無く、穴を掘って用を足しています。病気になったことはなくいつも健康、自分はこの生活が幸せだと男性は語っています。
いろんな人が手を差し伸べているのだが......
そんな男性の話を知った郡役所や赤十字ピチット県支部の職員が現地を訪れ、米、衣服、医薬品、台所用品を贈って男性を激励しました。保健衛生職員も男性を診察し、判断能力は通常で会話も通じている。身体もいたって健康で、メタボでも糖尿病でもないとの診断結果でした。
今までも町役場や男性の親族が手を差し伸べようとしたものの、男性は孤独が好きだからと毎回断ってきました。住居を与えようとしても断り、援助するなら米と果物だけが欲しいとの答えるだけだったのです。
穴の生活は涼しく快適で電気代も水道代も不要。いたって平穏に暮らせている。煩わしい思いをするのが嫌なので誰とも会いたくないと語った男性。考えようによっては誰にも迷惑をかけない理想のひきこもり生活と言えそうです。(取材・文◎赤熊賢)
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