【出典】東京大学「学生生活実態調査(2016年)」より。調査内の「家計支持者の年収額分布」をもとに筆者がグラフを作成しています(クリックで拡大します)
教育用語の1つに「再生産論」というものがあります。これは学校が人種や階級などの不平等を再生産するシステムになっているという理論。
例えば、日本の教育は「機会均等」を法律で定めていて、教育を受ける権利はどんな人でも持っています。
しかし、義務教育から高校、大学という高等教育を受けて一流会社に就職した人は、収入に余裕があることで子どもの教育にお金をかけることができるし、進学に関係する経験や知識を教えることもできます。
一方、義務教育だけで就職した人は収入が少ない職種に就くことが多く、子どもの教育に多くのお金をかけられず、進学に関することを教えることもできません。
つまり、高度な教育を受けてきた親を持っている子どもは、同じように高度な教育を受けられる可能性が高くなります。
それとは逆に、高度な教育を受けていない人の子どもは、親と同じように義務教育だけで終わってしまう状況がずっと続いていくというのが「再生産論」のメカニズムです。
つまり、生まれによる「格差」があるのは当然で、本来は学校という「平等」のシステムを利用することで格差が埋まるはずが、不平等な状況からはい上がるのを難しくしているということになります。
そこで、今回ご紹介するのは、東京大学が発表している「学生生活実態調査」の中にある「家計支持者の年収額分布」というデータです。
これは、東京大学に通っている学生の親(家計支持者)の年収を調査したもの。2010年以外では、年収950万円以上という家庭が5割を超えていて(2010年も49.9%が年収950万円以上です)、「再生産論」のメカニズムが作用していることを伺わせます。
世界の中でも「平等な社会」という印象の根強い日本ですが、その裏側にはこのような「不平等」がまだまだ潜んでいそうですね。(取材・文◎百園雷太「試験に出る統計データシリーズ」)
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