命の危険を顧みずに果敢に取材したBBCの報告
ミャンマーのイスラム教徒少数民族ロヒンギャの問題をめぐり、英BBCはこのほど、潜入取材を通じ、迫害を受けて隣国バングラデシュに避難しているロヒンギャ少女らが、売春目的で人身売買されている実態を明らかにしました。この記事は関係者らの間で話題に上っていますが、ミャンマー政府は現在のところ、声明などは出していません。
記事によると、BBC取材班は、ロヒンギャ難民キャンプが設置されているバングラデシュ南東部コックスバザールで、外国人買春客を装い、売春あっせん業者と接触。取材記録を地元警察に提出し、業者の逮捕とロヒンギャ少女の保護に貢献しました。さすがはBBC、大胆かつジャーナリスティックな取材を敢行したものだなと感心せざるを得ません。
BBCがロヒンギャ問題の取材に注力する背景には、ミャンマー・メディアとの対立や同国政府に対する反発があると指摘されています。
BBCビルマ語放送は昨年9月、同国の民間テレビ局MNTVとの事業提携を解消。「ロヒンギャ」という呼称を使用するBBCに対し、MNTV側が反発。BBC側も、MNTVによる不当な検閲や放送取り止めは受け入れられないとし、提携解消に至ったとみられています。
ロヒンギャとはそもそも、8世紀から西部のラカイン地方に住み続け、イスラム教を信仰する民族を指します。ところが、ミャンマー政府はロヒンギャを「民族」と認めず、ベンガル地方(現在のバングラデシュ)から来た「ベンガル人」と一方的に定義。自国メディアだけでなく、外国メディアにもロヒンギャという呼称を使わないよう求めているのです。
17年の人身売買は約300件
BBCは同記事の中で、統計には触れていませんが、関連データを見ても、ミャンマーで人身売買が増えていることは明らかです。
ミャンマー警察の報告を基に、国営紙グローバル・ニュー・ライト・オブ・ミャンマーが伝えたところによると、同国の人身売買件数は、2013年が102件、14年が124件、15年と16年が各131件と右肩上がりで推移。17年は11月時点で290件に急増しました。
16年の人身売買の内訳を見ると、強制結婚が69.7%、売春が13.6%、強制労働が10.0%、子どもの売買が4.8%、奴隷が1.4%などで、売春が第2位の1割超を占めています。
スーチー氏盟友の大統領が辞任
ミャンマー国軍傘下の治安部隊は昨年8月、西部ラカイン州で、ロヒンギャ系武装集団に対する大規模な掃討作戦を開始。この事態を受け、約100万人いるとされるロヒンギャのうち、60万人超がバングラデシュに逃れました。
両国政府は今年1月下旬から、ロヒンギャ難民のミャンマーへの帰還を開始する予定でしたが、準備不足を理由に延期。ミャンマー政府は近く開始する方針を示していますが、3月下旬時点でまだ始まっていません。
こうした厳しい状況にもかかわらず、ティン・チョー大統領は今月21日に辞任。健康上の理由とみられますが、憲法規定(※)により大統領になれないアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相にとって、盟友の辞任は痛手です。新大統領には、前下院議長のウィン・ミン氏が就任する見通し。ミャンマー情勢は予断を許しません。
※現行憲法59条(f)は、配偶者や子どもが外国籍の人物が大統領になるのを禁じている。スー・チー氏の息子は英国籍。
(取材・文◎新羽七助)
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