保守派の評論家として知られる西部邁さん(当時=78)が今年1月、東京の多摩川で自殺をほのめかす遺書とともに遺体で見つかりました。その際、入水自殺の手助けをしたとして、警視庁は西部さんが出演していたTOKYO MXテレビの番組「西部邁ゼミナール」制作担当子会社のディレクター窪田哲学容疑者(45)と、青山忠司容疑者(54)を、自殺ほう助の疑いで逮捕。
西部邁さんは自身でシャツのボタンがとめられないほどに手足が不自由だったそうでしたが、遺体で発見された際にはしっかりと遺体が流されないようロープが付近の木にくくりつけてあり、最後に目撃報告のある場所から約10キロの距離をタクシーも使わずに移動していたため、当初より幇助の人間がいるのではという疑いが持たれていました(すでに本サイトでは3月15日に第一報を書いています。評論家・西部邁さんの自殺に「誰かが関与している」可能性を独自取材)。
また、謎の小瓶が口の中に入れられていた点、入水自殺に見せかけていながらも水を飲んだ形跡がない点、長女の留守番電話に異音が残されていた点、遺書が何者かによりワープロソフトで作成されていた点などから殺人事件ではという憶測もありました。
一方で西部さんは生前「生の最期を他人に弄り回されたくない」「子供に迷惑がかからないように人生を終えたい」と度々語っていたため、「自裁死」という線は崩されておらず、逮捕された2人も「西部先生の死生観を尊重して、力になりたいと思った」と容疑を認めているといいます。
実際にこの発言を裏付けるように逮捕された2人と西部さんの繋がりは深かったようで、残された長女も当初は自殺に懐疑的なコメントを出していましたが、逮捕された2人の名を耳にすると「父が頼んだことなので、断ってくださったらよかった。2人に申し訳ないことをした」といったコメントを出しています。
この事件はインターネット上でも大きな注目となっており、「殺人ですな 自殺ほう助かどうかを証明する物証がない」「偽装自殺させて、犯人は自殺ほう助って言えば刑を軽く出来るじゃないか」「二人の男性に自殺ほう助してもらいますって書き残さなかったの?」といった"自殺ほう助"に対する異論を唱える声も大きくなっています。
現在この事件から「尊厳死」の必要性という議論が各所で交わされるなど大きな波紋となっています。
スイスやオランダ、ベルギーなどでは既に一部容認となっている「尊厳死」。
西部邁さんの死は、終末期医療をめぐる日本の状況を大きく揺さぶる一石となりそうです。(文◎編集部)
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