今年最後の原稿を書いていた12月27日夜、ツイッターでおぞましい記事が流れてきた。衆院選の真っ最中の12日、東京1区に出馬した自民党の山田美樹氏の運動員が人身事故を起こし、相手方が一時意識不明になる事態が発生したのだ。被害者は外傷性クモ膜下出血で、半年も通院が必要とのこと。
その事故自体は双方にとって不幸なことだ。だが問題は、加害者である山田氏側に誠意が見られなかった点。これをいち早く報じた毎日新聞によると、山田氏は救急車が到着後に事故現場から30mしか離れていない場所で街宣を始め、事故処理中もやめなかったという。
さらなる問題は事故の翌日に被害者が搬送された病院に秘書が赴き、「月曜日(投開票日の翌日)まで(身分を明かすことを)待ってほしい」と伝えた点だ。人命にかかわる問題なのに、山田氏サイドは選挙への影響ばかり気にしていたということになる。
問題はまだある。山田氏自身はその日の夕方に報告を受けたものの、そのまま放置。おそらくは「秘書に任せていればいい」と考えたのだろう。人命を軽く見ているばかりではない。毎日新聞の取材に対し、山田氏の事務所は「山田もお見舞いに伺った」としたが、実際に山田氏が病院に行ったのは取材申し込みの翌日だったという。
ダメ押しとなったのは、国会周辺で記者が山田氏に直接あたった時だ。なんと山田氏は「イレギュラーな取材は勘弁してほしい」と言ったという。
いったい自分の責任をどう思っているのか。このような人間が国民の代表で、次の選挙までその地位に居座るなんてとんでもない話だ。しかも山田氏は自民党の交通安全対策特別委員会の事務局長を務めているという。自民党の交通政策って、いったい何やってんですか? と言いたくもなる。
これと同時に飛びこんできたのが、宮城3区で落選した民主党の橋本清仁氏のニュースだ。橋本氏は遊説中に事故車両に遭遇し、すぐさま活動を中断して車中に閉じ込められていた3人の女性を救出した。27日には岩沼市消防本部から感謝状が贈られている。
実は橋本氏とは、彼が議員になる前から知り合いである。そこでさっそく電話をかけ、当時の様子を聞いてみた。
「岩内市内を遊説してまわっていると、車が横転していたんだよ。エアバッグから出た白い粉でガラスが曇っていて、車内の様子がよくわからない。でもこれはまずいと思い、街宣車を降りて助けに行った。運転席に女の人がいて、シートベルトを締めている。これを切らなきゃ引っ張りだせない。近所の薬局でハサミを借りてシートベルトを切って救出した」(橋本氏)
ところが最初は1人だけだと思っていた車内に、まだ2人いることがわかった。
「後部座席には運転者の母親と姉妹が座っていたんだ。運転席の女性を救出する時に座席が動いては、後部座席の人がけがをするかもしれない。だから片手で座席を抑えながら、片手で女性を抱えた。3人とも無事に救出できた時は本当にほっとした」(橋本氏)
これを報じた河北新報の記事は、またたく間にツイート数とFBのシェア数が急上昇している。
「あっ、増えている」
電話の向こうで橋本氏は、反響の大きさに驚いていた。
下野して2年たつが、まだまだ民主党にとって厳しい情勢。前回の衆院選もきっと苦しく、決して楽な戦いではなかったはず。そんな中、困った人を見捨てることができず、選挙活動を中断して助けた橋本氏。あなたを友人に持って、本当良かった。
Written by 安積明子
Photo by 自民党ホームページより
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