川崎で中学1年生の男の子が凄惨な殺され方をした事件について、現場の状況が明るみになると共に、これはTVを中心とした報道メディアの罪ではないかと感じた。
というのも、あくまで私個人の想像の範疇を出ないが、現場に残された遺留品や、被害者を拘束する為に使ったであろう結束バンド、また死因と特定された首の切り傷などから何が思い浮かぶかと言うと、「ISILの殺害動画」なのだ。 これとイジメが最悪の形で融合してしまった結果が、今回の川崎の殺人事件なのではなかろうか。
各メディアはまだ断定こそしていないものの、知人の記者連中に話を聞いたところでは、殆どの媒体が「イジメの結末」と決め打ちをして取材をしているようだ。であるならば、加害者も被害者とたいして年齢に差がないだろうし、TVやネットで見たものを真似してしまうという幼稚性にも納得がいく。
さて、ISILの人質殺害に関して、主にTVを中心とした大手メディアは、これでもかと殺害動画を垂れ流した。当然殺害シーンそのものは映さなかったものの、子供の知能でも「結束バンドで後ろ手に縛るなどして跪かせ、刃物を首にあてる」ところまでは容易に想像が付くレベルの映像を、毎日毎日繰り返し流し続けていた。
今回の川崎の事件は、そうした後先考えない報道にアテられたアタマの足りない子供が、「いまイジメてるアイツにもやってみようぜ」と、勢い余って真似てしまったという流れなのではないかと推測する。
このような痛ましい事件について書く際に、私的感情たっぷりに話題のすり替えをして良いものかどうか悩むが、非難を承知であえて言わせていただく。もしこれが仮に「児ポ案件」や「オタク案件」だったならば、各メディアはどのような報じ方をしただろうか?
何事かの事件の犯人の部屋にたまたまマンガやゲームがあっただけで「ほらやっぱりオタクが! ロリコンが!」と報じられるのだから、例えばISILに関する動画が問題となってYouTubeのアカウントを凍結されたと噂の流れているテレビ朝日など「テレビ朝日の影響で殺人事件が起きた!」と総攻撃を受けなければ話がおかしい。テレ朝だけではなく、ISILの映像を流した事のあるTV局全てが同罪だ。
TVメディアはこの事件とTV報道をなるべく切り離して報じるだろうし、犯人が特定されればまさかの「マンガ・アニメの影響」なんて冗談にもならない責任転嫁が起こるかもしれない。だが、誰がどう考えても川崎の事件に最も近い存在はTVが喜んで流し続けたISILの映像である。果たしてこの責任を誰が取るのだろうか。
ヒステリックなオタク・ロリコン叩きと同じ手法を採用させていただくならば「世の中に最も悪影響を与えているのは、ビジネスの為に刺激的な情報を垂れ流せればそれでいいと考えている各報道メディアである」と断定してもよかろう。こうした指摘を堂々としてのけるTV局が現れてくれる事を切に願う。この事件は、メディア・スクラムのひとつに数えるべき悲劇である。
Written by 荒井禎雄
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