"山口メンバー"の事件で塗り替えらえてしまいましたが、それまで比重の多かった報道といえば、福田淳一前財務省事務次官に端を欲した、セクハラに関するもの。たとえば4月24日付け東京新聞では、「本誌女性記者のセクハラ体験」を座談会形式で話しています。
同記事を確認すると、相手は企業人から警察官、自治体幹部、政治家秘書や官僚などで、「抱きつかれた」「キスされ布団にひきずりこまれそうになった」「君をレイプしたいと大声で言われた」など、下劣で酷いエピソードばかり。福田さんの被害者が朝日新聞記者だったことから、大手新聞の女性記者の対セクハラに悩まされながらの取材方法が、主な主軸になっています。
一方のわたしは、AV制作会社やエロ本擁する出版社出身。大手新聞社にはない、"ならでは"なセクハラ経験を振り返ってみました。あくまでわたし個人が見た世界の話です。
「期待に応えなければならない」と脱いだ女性ライターのその後
まずはAV制作会社。社内で淫語が飛び交い、社内撮影があるのは当たり前。そこらへんに男性器や女性器が転がっていようが、それは立派な商品ですから、それを利用して人を傷つけようなんて思わないのかもしれません(なお、AV女優さんや、路上ナンパでMM号に乗せていた本物素人への出演強要は、ここでは含めません)。むしろ映像業界特有のパワハラの方が横行していました。
そしてエロ本系出版社。まず最初に驚いたのが、職業の線引きが曖昧で、平気で男性編集者が脱ぎハメ撮り風撮影を行ったり、女性ライターが脱衣を要求されたことです。AV制作会社ではそうした曖昧さはなく、脱ぎやハメは"プロ"であるAV男優さんやAV女優さん、そしてハメ撮り監督の仕事だったのに、と。とある現役編集者はこう話します。
「"エロ本編集者は脱いで一人前"みたいな不文律があります。僕は温泉をはじめ、人前で裸になることが本当に苦手なんですが、そんなのは通用しません。『うじうじしてないで脱げや』と上司に言われたら脱ぐしかなかった。本当に嫌でしたね。さらに、撮影素材をセレクトする女性編集者に『ちんこ勃たなかったんすね』と笑われる仕打ちつき。しかも別に脱ぐ必要のない撮影だったりもするから、僕の醜態を見て嘲笑したかっただけだったのかと。悔しい思い出です」(40代男性)
わたし自身も多くの先輩のちんこたちと対峙しました。直接は言わずとも、「あらあ、黒ずんじゃって」「へええ、意外と大きいのねえ」などとそらした視界の端から見て思ってしまい大変申し訳ございませんでした。
女性編集者や女性ライターにも、上司命令や業界的無言の圧力は降りかかります。00年代前半にエロ本界隈で活躍した、とある有名女性ライターXさんがいます。最初は、コスプレ姿でレポートするなどゆるいことから始まったと記憶しています。
それから数年後、誌面で見た彼女は、全裸で顔には仮面、手首を縄で縛られ、複数人の男たちからラブホテルの一室で輪姦されていました。DVD付き雑誌ブームだった当時、同誌にもついていたDVDを確認すると、男たちから代わる代わる責められアエギ声をあげるXさんの姿がそこにはありました。それはそれは、反吐が溢れる映像でした。
その後Xさんは精神を病み、ライター業を休止せざるをえなくなるまでに至りました。「仕事がなくなるかもしれない」「期待に応えたい」「エスカレートに歯止めが効かなくなった」、様々な"断れない理由"に、がんじがらめにされたのかもしれません。
わたし自身も、フリーライターになりたての頃に某社へ営業に行くと、「じゃあこういう企画やりましょうか」と見本として見せられたのが、乳首を透けさせた衣装で路上に佇む「女性ライター○○のあたしを感じさせてください☆」みたいな誌面でした。"女性ライター"というタイトルがつきながら、カラーグアビアに文章はこの原稿の10分の1ほど。ナメてるんでしょうね。まあナメますよね、わたしのような能なし女のことは。
一方でわたしも、女性漫画家さんに女性器を舐めさせて潮を吹かせてもらったり、女性器占い師(http://tablo.jp/street/news002568.html)の元に送り込んだこともありますから、もし漫画家さんが「#Me too!」と声をあげたら終わりです。
出版業界ではよく語られるのが、男女限らず作家先生からのセクハラではないでしょうか。エロ本界隈でももちろんそうしたことはあります。
「セクハラレベルではありません。あれはレイプでしたね。受賞経験もある男性作家に取材同行した新人女性編集者が、その晩ホテルの部屋に呼ばれ、男女の関係になった、という事件がありました。それ以上の詳細は、裁判にも発展しましたし密室のことですから他人である自分は言及できませんが、作家の威圧的な言動があったといいます」(30代女性編集者)
しかし、酷いのはそれからだったといいます。
「作家は有名でさぞご立派だからか、彼をフォローするアホが何人もいました。彼女の会社関係者の中には、『彼のことをちゃんと守ったのか? 作家を守れない編集者は、編集者失格だ』と言う人や、『彼女もすごい濡れてたって聞いたよ』と卑しく笑った人もいます」(前同)
しかし。こうした強姦事件は該当しませんが、すべてを「me too! 断罪せよ!」と学級会のようにしてしまうと、最終的に締まるのは自分の首のような気がしてなりません。
どれがセクハラに当たるのか?
さて、ク~イズクイズ♪ (な~んのクイズ♪)以下のうちで「セクハラ」はどれでしょ~か!
1.校了直後、気がふれていた隣の編集部の編集長に、突然胸を鷲掴まれた。
2.女性が好きでどんな女性でも「きみの足首、セクシー」などと長所を見つける特技を持つ担当編集者に、「今日のきみのうなじ、さいこう~」と舐めるように見られた。
3.たちんぼグランプリに参加し男娼に間違われ、2万円の値をつけられた。
4.暴排条例の密接交際者の事項が設けられる以前、先輩に頼まれ暴力団組長との食事会に同席。話の流れでなぜか「尻を見せろ」と言われ、先輩の方を見ると「そうだそうだ」と煽る。恐ろしい罪で懲役経験のある組長を前に、後ろを向き尻を見せるしかなかった。そして「もっとセクシーにしろ」等言われた。
正解は~~?
「どれもセクハラだ」という人がいるかもしれませんし、「2と3は違うけど1と4はセクハラだ」という人もいるかもしれません。「全部違う」という人もいるかもしれませんし、「『全部違う』と言う女性がいるから、女性全体がナメられるのである」と"フェミハラ"かましてくる人もいるかもしれません。
わたしはこうした話を、笑い飛ばしてネタにできる時代を少しでも生きることができてよかったなあ、もうムリだものなあ、と思うのでした。(文◎春山有子)
懐かしいな〜たちんぼした日々。Metoo!
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