ストーカーから顔面に硫酸をかけられた女性! 病院で治療もされず死亡 お金が無かったから......?

2018年12月25日 ストーカー パタヤ 硫酸

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rama.jpg事件があったラーマ2世病院

 先月、凄惨なストーカー事件があった。

 11月10日(土)の朝4時頃。タイ人女性のチョンラダさん38歳は自宅で寝ていた所、ストーカーとなっていた元夫から突然、顔と口の中に大量の硫酸をかけられた。

 硫酸で顔面も口の中も重傷となったチョンラダさんは、急いで近所の大型公立病院のラーマ2世病院へ、12歳の娘と訪れた。到着したのは午前5時頃だった。

 病院側はチョーラダさんを見ると、医師や治療スタッフの不在を理由に治療を拒否し、看護師は近くのバンモッド病院に行くように言ったのだ。同行していたチョンラダさんの12歳の娘は、看護師に膝をついてまで、どうか治療をしてほしいと懇願したが、看護師は断り、別の病院への交通費として40バーツ(約130円)を渡しただけだった。

 やむなくチョンラダさんは12歳の娘と別の病院へ行こうとし、タクシーに乗って向かったが、病院に到着する前に亡くなってしまった。

20181222_Tablo_01.jpgチョンラダさんの葬儀の様子


 事件を受け、タイ警察は翌日の11月11日に硫酸をかけた元夫を逮捕。凄惨なストーカー事件としてメディアでも大きく報じられ、タイで大きな反響となり、治療をしなかった病院への批判も殺到した。


なぜ病院は治療を拒んだのか


 事件の発端となったのは50歳の元夫のタイ人が、チョンラダさんと別れた後も執拗につきまとうストーカーとなっていたこと。元夫はチョンラダさんに他に男がいると思って嫉妬し硫酸をかけたのだ。

 タイの国民性として嫉妬をしやすい、短気な犯行が多いという事情があり、タイでは男女間の嫉妬で、銃で撃つ、ナイフで刺す、性器を切り取るといった凄惨な事件も多く発生している。今回の硫酸もその一つ。

 一方、治療しなかった病院は、医者がチョンラダさんへの治療を拒絶したからだと発表している。
 これについて、タイでニュース配信などをしているパタヤ日本人会は取材にこう答える。

「タイでは公立病院でも、医者が治療を断る事は多くあります。例えば妊婦が出産という際でも、自然分娩は時間もかかるし医師への報酬も少ないからやらないという医者も多く、その場合は治療を拒絶されます。それと同様に、硫酸を顔にかけれて気持ち悪い状態だから、医者が治療したくないと言えば、治療は拒絶されてしまうのです。
 この被害者がお金持ちで、治療すれば大金をあげるとか言えば、医者が治療してくれる可能性は高まるのですが、普通の人にはそんなお金はないでしょうから、可哀そうです」

 この事件については報道の反響もあったが、その論点は医者が不在で違法状態であったかどうかで、医者が治療を拒絶した事への批判というものはほぼ無いと言っていい。それはタイでは普通の事だからだ。

「逆に言えば日本の大型病院のように、どんな患者でも、外人で保険があるかどうかもわからなくても、医者が最善の治療をしてくれる医療体制があるというのは、すごい事なんですよ。タイも本件のように世論が動く事で、弱者が救済されるように変わってくる事を期待しています」(同上)

 このような事件を見ていると、日本人としては医療制度の在り方を考えさせられる。

 皆保険が同様に崩壊しているアメリカの医療制度の現状は、「ジョンQ」(2002年ドラマ)で端的に表されている。

「世の中には持つ者と持たざる者がいるんだ。病院でも相手にされる者とされない残念賞組が。25万ドルを払えない者は大勢いるんだ。そういう者を追い詰めるのは世の中の何かが間違っているからだ。」

 凄惨なタイニュースを見て、日本の医療制度の良し悪しも考えさせられる。(取材・文◎西山哲治)

[取材協力]
(PJA) パタヤ日本人会
http://pattayaja.com/

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