以前、中国で「鮭を食べたらお尻から油が出て止まらなくなった」という報道があった。
http:/news.sina.com.cn/s/pa/2015-11-04/doc-ifxkhcfq1135363.shtml
この報道を見て、ピンときた。というのも以前、この魚を食べたことがあるからだ。沖縄本島から東に約400キロの地点に浮かぶ南大東島。その島で密かに流通する魚が、まさに同じ特徴を持つ魚だったからだ。それはインガンダルマ(バラムツ)という深海魚で大きいものでは体長は3メートルに及ぶ。かつては九州でも出回っていて、学校給食にも使われるほどポピュラーだった。しかし、お尻から油が漏れ問題になったのか、市場から姿を消したという。
その魚を割烹で食べてみた。特別な魚だからさぞ高いのかと思ったら、刺身も塩焼きも500円だった。刺身は刺身のように白く、イカのようで一件何の変哲もない。ところが身を醤油に浸すと細かな油がさっと醤油の表面に広がるではないか。歯ざわりは高野豆腐のようなスポンジ風のようで、まずくはないが、ものすごく美味というわけでもなかった。一方、塩焼きの方は脂ののった銀ムツのようでなかなか美味だった。
翌朝、民宿で和式トイレに入り、踏ん張った。特にお腹を壊しているというわけでもない。それに腹痛もない。違っていたのは、油がぎとぎとに浮かんでいたということだ。困ったことに拭いても拭いてもなかなかとれないではないか。肛門をきゅっと締めていようがいまいが、流れて出てしまうのだ。これには参った。島の専門家は話す。
「販売禁止のその理由というのは、『刺身で三切れ以上食べるとお尻の穴から油が出る』からで、要するに人間の腸では吸収しきれない、ワックスのように細かい油が身に含まれているからです。それはロウソクと同じような成分の、ワックスエステルによるワックス型食中毒。腹痛も無く気づかないうちに出るそうです」
日本では幻の魚となったインガンダルマ(バラムツ)。偽装され、お尻から流れ出たというニュースを聞き、再び島に行ってその魚を食べてみたい気がした。
Written & Photo by 西牟田靖
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