「お前はーアホかー♪」と言いながらノコギリを叩く音楽ギャグで数十年以上、関西お笑い界に君臨している音曲漫才の兄弟トリオY。関西人にとってYといえば、演芸番組に欠かせないホットなグループで、今でもブラザーズとして大活躍中だ。そんな大御所芸人Yには隠したい恥ずかしい過去がある。
数年ほど前。近鉄南大阪線の某駅構内に、とある男性の声が響いていた。
「どこやー! だれやー! ワシの商売道具を盗んだんわ!」
怒鳴り声とも悲痛な声とも聞こえるその叫び声の主は、兄弟トリオYの長兄Aだった。駅員が慌てて駆け寄ると、Aは怒りに震えながら説明をはじめた。
「ワシのノコギリがあれへんねや! ワシが便所に行ってる隙にやな、誰かに取られてもうたんや! 一緒に探してくれ!!」
絶叫しながら駅員に協力を求めるA。しかし、利用者の多いこの某駅の乗客のなかから犯人を探し出すのは不可能だった。その旨を伝えると、Aは掴みかからんとする勢いで怒鳴り散らした。
「老人会の余興やねん! ノコギリがなかったらお客様が怒って帰ってしまうがな! どないすんねん、近鉄電車!」
困り果てた駅員が新しいノコギリを購入してはと提案すれば、「ワシのノコギリやなかったらアカンねや!」とわめき散らす。仕方なく警察の応援も得て、某駅構内と周辺地域では大捜索が開始された。
その間Aは、ノコギリが盗まれたとされるベンチで待ち続けていたという。
「いろいろと探してみたんですが、見つかりませんでした。申し訳ないです」
駅長が申し訳なさそうな表情で、Aに謝罪の言葉を述べた。するとAは、涙をこぼしそうな寂しい顔になりベンチの上でへたり込んだという。
そこへ、メンバーである次男M、三男Sが「もう出番の時間やがな!」と文句を言いながら駅に長男を迎えにきて、「なにしてんねや、お兄ちゃん!出番やんか、もう」「いつものノコギリは?また家に忘れたんかい!」と、予定の時間になっても余興の老人ホームに姿を見せないAに対して、弟たちはコトの事情を知らないまま罵詈雑言を浴びせていく。弟たちが言葉をぶつけるたびにAは鬼のような形相に変わっていった。
そして、Aは怒りをおさえながら弟たちにコトの経緯を説明した。しかし、弟たちは「ノコギリよりも、出番が大事やろ」と譲らず、駅構内で大御所3人によるケンカが勃発。そこで殴り合うことはなかったが、利用者で溢れかえる駅のホームで揉めている大御所芸人たちには迫力があったのか、フェンス越しに野次馬の人だかりができていたという。
最終的には、「ノコギリ芸人!」と野次られたことをキッカケに、Aと野次馬の男性数人とのケンカに発展。なかなか決着がつかぬまま出番の時間になり、逃げるような形になってしまったAがその野次馬たちに、
「お前らはーアホかー!!」
と、自身のギャグを少しだけアレンジした言葉を捨て台詞にし、その場を去っていったと周辺地域の住人によって今も伝えられている。
ちなみにその後、ノコギリは戻って来なかったという。
Written by 村上茜丸
Photo by 平成版・昭和のお笑い名人芸9
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