こぶしファクトリー『これからだ!』(25:40あたりから)
https://www.youtube.com/watch?v=ALM-FBJdzGA&t=1542s
女性アイドルグループの解散が相次ぐなか、危機的状況に直面するも前を向いて進んでいくことを選択したのが、ハロー!プロジェクトの5人組・こぶしファクトリーです。
2015年1月、ハロプロ研修生から選抜された8人で結成されたこぶしファクトリー。同9月にメジャーデビューすると、この年の日本レコード大賞最優秀新人賞を獲得するなど、華々しいスタートを切りました。
しかし、2017年は激動の1年となってしまいます。まず5月、サブリーダーの藤井梨央が学業専念のため、夏のハロー!プロジェクトのコンサートツアー終了後に卒業すると発表。ところが、同7月6日、藤井に「ハロー!プロジェクトのルールに反する事案」が発覚し、改善の話し合いが行われたものの、「その際に取り交わした約束が果たされなかった」として、専属マネージメント契約の途中解約が発表されます。
さらに7月13日には小川麗奈が不安神経症と診断されたとして活動休止。しかし、体調は回復せず、「グループの活動に、これ以上迷惑をかけられない」という本人の意志もあり、9月6日にグループを卒業し、芸能界を引退します。
そして、12月6日には田口夏実とのマネージメント契約が終了したと所属事務所が発表します。ここ数か月の田口の行動が「こぶしファクトリー、並びにハロー!プロジェクトのメンバーとして自覚と責任を欠くものであった」と判断された結果とのことです。
ネット上には離脱メンバーのプライベート写真なども流出。アイドルの自覚に欠ける行動が脱退・卒業の原因であったことは否めず、こぶしファクトリーにとって2017年は、ネガティブな動きが続いた1年となりました。
残された5人は、こぶしファクトリーとしての活動を継続することを決意するわけですが、「このままで大丈夫なのか?」という不安を抱くファンが多いのも事実。そこで今後のこぶしファクトリーの行く末について何らかのヒントを与えることとなりそうななのが、ハロプロの先輩で昨年6月に解散した℃-uteです。
あの時の「ショック」療法......
℃-uteは最大8人組でしたが、メジャーデビュー直前となる2006年11月に1人が脱退、2009年に2人が脱退・卒業し、5人組となります。そして、5人となって初のシングル『SHOCK!』は、事実上の"鈴木愛理のソロ曲"となり、さらにメンバーカラーがシャッフルされます。多くのファンは、「もうこのまま、鈴木愛理のソロユニット化していくのでは...」と困惑。鈴木愛理とほかのメンバーとの関係も悪化し、グループの状態は危機的だったといわれています。
メンバーが減ったうえに"ショック療法"まで施された℃-uteですが、2010年8月に代表曲となる『Danceでバコーン!』をリリースし、上り調子となっていきます。"鈴木愛理のソロ路線"を捨て、5人のシンクロ率の高いダンスを軸にパフォーマンスのクオリティーを追究するようになると、ファンは拡大。その後、いつしか「実力No.1アイドル」と称されるようになり、日本武道館や横浜アリーナ、さいたまスーパーアリーナを満員にできるほどのグループとなりました。
現在のこぶしファクトリーを取り巻く状況は、"ショック療法"を経験した当時の℃-uteに比べればかなり良好だといえるでしょう。5人体制初のシングルに収録される『これからだ!』(3月28日発売)を聞く限りでは、5人はすでに同じ方向を向いていることは間違いなく、解散危機という状態ではないはず。
『これからだ!』は、今の5人の気持ちを歌ったポジティブな楽曲です。そして、広瀬彩海のハモリ、和田桜子のラップ、井上玲音のボイスパーカッションなど、各メンバーの見せ場もしっかり入っている。少なくとも誰か1人のソロ路線にはなっておらず、これならばファンを無駄に不安にさせることもありません。
さらに、ハロコンやリリースイベントなどで披露されている5人のこぶしファクトリーによる『これからだ!』を見れば、5人がパワーにみなぎっていることも十分伝わってきます。
人数が減ったことで、5人それぞれの見せ場を作りやすくなり、個々の役割が明確になりました。存在感たっぷりの広瀬彩海、表情豊かな野村みな美、エースとしての浜浦彩乃、パワフル&ガーリーな和田桜子、小悪魔感で魅了する井上玲音。8人のときとはまた違った感覚で、5人の魅力がダイレクトに伝わってきます。℃-uteがそうだったように、人数が減ったことで見た目の強さやインパクトは薄れましたが、パフォーマンスの一体感は格段に上がっているわけです。
そして、8人だった頃は、相撲、野球、応援団、ラーメンなどをモチーフにした楽曲が多かったこぶしファクトリーですが、『これからだ!』は"こぶしファクトリー"そのものがモチーフになっている曲です。さらに両A面曲の『明日テンキになあれ』の"テンキ"には"転機"という意味も込められているということで、こちらもまた完全に"こぶしファクトリー"そのものを歌っている曲です。
つまり、激動の2017年を経て「こぶしファクトリー」は、「相撲」「野球」と同列にある存在になったわけです。相撲や野球がドラマティックであるように、こぶしファクトリーもドラマティックなもの。それこそ少年漫画のような物語を地で行くこぶしファクトリーが、面白くならないわけがない、ということです。
何事もなく8人のままでグループが進んでいくことが好ましかったのも事実でしょうが、追い込まれたからこそたどり着いた道をいかに楽しんで突き進んでいくかということもアイドルの醍醐味。今その醍醐味を思い切り体感できるのが、こぶしファクトリーです。本当に面白いのは、これからだ!
文◎大塚ナギサ
【関連記事】
●――"ハロプロらしさ"―― 『ラストアイドル』つんく♂参戦について、ハロヲタの主観的な意見
●【乃木坂46を卒業】生駒ちゃんはなぜバッシングの嵐にも無言を貫いたのか──【運営に翻弄】
●世界実力No.1アイドルと言われた℃-uteの元センター・鈴木愛理が7月に『武道館単独公演』という大勝負に出る!