単行本『なんと言われようとオレ流さ』(講談社)
FAの人的補償で巨人は内海哲也と長野義久という2大名選手を失ってしまいましたね。過去に広島から大竹寛の人的補償として差し出した一岡竜司が敵地で大活躍したのを見て、「有望な若手はプロテクトしよう」という判断をしたのかもしれませんが、それにしても内海と長野ですよ! 仮に内海・長野←→丸佳浩・炭谷銀仁朗なんてトレードがあったら「世紀のトレード」なんて騒がれたことでしょう。
となれば思い出すのが、1986年オフ、落合博満(ロッテ)←→牛島和彦・上川誠二・平沼定晴・桑田茂(中日)です。あの頃の落合のすごさったらハンパなかったわけで、仮に落合がWBCに出たらどうなるか? なんてことを思ってしまうわけです。というわけで、落合を4番に据えた日本代表チームを作りたくなるじゃありませんか。彼が最も活躍した昭和60年(1985年)にもしもWBCがあり、侍JAPANが結成されたらどうなるか、という妄想を書いてみます。
まぁ、監督は日本一監督の吉田義男(阪神)という手もありますが、あの年は「新ダイナマイト打線」のお蔭で阪神はとにかく打ちまくり、吉田氏を"名将"と呼ぶのには若干抵抗感がある。やはり日本シリーズで戦った西武の広岡達朗監督ですかね、ここは。さて、選ぶ選手数はWBCと同じく28人。前回大会では投手は13人、捕手3人、内野手7人、外野手5人だが、85年当時のピッチャーはスタミナがあったので12人にし、外野手を6人とする(途端に野球解説者風の文体にしてみたゾ)。
1985 WBC侍ジャパンメンバー(勝手版)
【投手】(勝利・敗戦・セーブ 防御率)
小松辰雄(中日)17-8 2.65
遠藤一彦(大洋)14-7 3.15
北別府学(広島)16-6-2 3.57
斎藤雅樹(巨人)12-8-7 2.96
工藤公康(西武)8-3 2.76
渡辺久信(西武)8-8-11 3.20
東尾修(西武)17-3 3.30
山田久志(阪急)18-10 4.33
鹿取義隆(巨人)4-5-4 3.52
中西清起(阪神)11-3-19 2.67
佐藤政夫(ロッテ)2-3-5 1.90
石本貴昭(近鉄)19-3-7 3.56
この頃のアメリカ打線はアンダースロー投手が苦手であろうということから、先発に山田、リリーフに鹿取を入れた。松沼博久(14-6 4.16)と山田で迷ったが、場数の差から山田を選出。21勝を挙げ、パ・リーグ最多勝の佐藤義則も迷ったが、260イニングも投げて疲労困憊だろうから選出はしていない。左腕の先発には工藤しかいないが、江夏豊が引退した翌年なだけに右腕の本格派だらけなのは致し方ない。一方、リリーフには佐藤と石本の2人の左腕を入れている。この年は全般的に打高投低だったため、上記のような選択となった。
【捕手】(打率・本塁打・打点・盗塁)
伊東勤(西武).258 13 62 13
中尾孝義(中日) .284 11 29 3
八重樫幸雄(ヤクルト).304 13 68 2
1982年セ・リーグMVPの中尾はこの年は出場機会は少なかったものの、11本塁打は見事である。伊東・中尾にはリード面と肩を期待し、捕手なのに3割を打った八重樫には代打の切り札としての起用もあり得るだろう。あの怪しい打法は海外選手にとっては驚異になるはずだ。
【内野手】
落合博満(ロッテ).367 52 146 5
掛布雅之(阪神).300 40 108 3
岡田彰布(阪神)342 35 101 7
高木豊(太洋).318 11 50 42
松永浩美(阪急).320 26 87 38
高橋慶彦(広島).276 24 68 73
宇野勝(中日) .274 41 91 5
とにかく無茶苦茶な本塁打数である。本来二塁手と遊撃手は本塁打は少なく、高木の11本というのが普通だろうが、岡田の35本、松永の26本、高橋の24本、そして宇野の41本というのは異常である。宇野は例の「ヘディング」事件があるため、守備に不安がありとし、DHでの起用となる。
【外野手】
真弓明信(阪神).322 34 84 8
西村徳文(ロッテ).311 6 46 36
吉村禎章(巨人)328 16 56 8
山崎隆造(広島).328 10 46 35
屋敷要(大洋).304 15 78 58
秋山幸二(西武).252 40 93 17
内野手にパワーヒッターが揃っているため、外野は守備のウマさと脚の速さを求める選定となった。この年はまさに吉村の打撃開眼2年目にあたる。秋山は打率こそ低いものの、走攻守すべてが揃っており、MLBスカウトのお眼鏡にもかなうことだろう。この中では西村と山崎というクセモノを入れ、相手を攪乱したい。
という勝手な選出をしてみたが、昭和末期のプロ野球もこうして振り返ると個性的な選手が多かったことが分かるだろう。それで、ベストオーダーはどうなるか?
1.秋山幸二(中)
2.高木豊(二)
3.掛布雅之(三)
4.落合博満(一)
5.宇野勝(DH)
6.松永浩美(遊)
7.屋敷要(左)
8.伊東勤(捕)
9.真弓明信(右)
これでどーだ! しかし、当時から「オレ流」で知られていた落合氏、オフシーズンにWBCがあったら本当に出てくれていたのか? そこだけが心配です。文(文◎中川淳一郎 連載『俺の昭和史』)
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