元『噂の真相』編集長・岡留安則の「編集魂」
先週金曜日、27日の夜、久田将義氏、青木理氏と一緒に、大阪のロフトプラスワン・ウエストでトークライブをやった。「噂の真相」プレゼンツ・休刊10周年ということで、メインテーマは「反権力ジャーナリズムの現状」。新宿のロフトプラスワンでのトーク参加は常連だったので特別に気を使うことはなかったが、大阪となればこちら側が観客の関心事がイマイチ把握できないため、安倍政権から芸能ネタまでトークの幅を広げて対応。新宿ではトークライブハウスとして市民権を得たロフトプラスワンだが、大阪では苦戦しているとも聞く。トークライブハウスが大阪文化に馴染むかどうかの判断も難しい。そのこともあってこちら側も手さぐりのトークだった。
面白かったのは青木、久田両人が、トークの内容が外部に流出しないように観客に対してしきりに釘をさしていたことだ。個人的な意見を言えば、こうしたトークや講演会もそうだが、開かれた公的な場ではオフレコは通用しないと思うべきである。同時間や翌日にはインターネットで簡単に流される時代でもある。筆者の場合、例え取材先からオフレコで聞いた話でも公表すべきと思えば、顰蹙を買ってでもやるべきというのが基本的な考え方。その際の価値基準は、読者や観客、視聴者にとって知らせるべき内容かどうかを客観的に判断する。そのことで、取材先との信頼関係を失うことになる局面も覚悟すべきである。それこそが、反権力スキャンダリズムをやり抜くための決意と覚悟ということではないのか。ロフトのトークライブでは言わなかったので、この場を借りてこの日の結論として追記しておきたい。
それはともかく、現実の世の中を見れば政治家もメディアも衰弱の極みだ。最近では石原伸晃環境大臣が被災地を訪れた後の記者会見で述べた「最後は金目でしょう」発言が問題視された。石原大臣は被災地を謝罪して歩いたが、大臣職は続投。被災地住民に限らず、国民に対する明白な侮辱である。直接は言及していないが、沖縄の米軍基地の代償として一括交付金や基地振興経済策などを要求する沖縄県や経済人の指向性を批判しているように思える。しかし、金で何とかなるという発想は石原大臣だけではない。
官邸や石破茂幹事長や安倍政権も同じだ。すでに、官邸は今年11月に予定される沖縄県知事選に向けて、現職で辺野古新基地建設を容認している仲井真弘多必勝を期すために金も糸目をつけずにつぎ込む戦略を展開している。対立候補と目される翁長雄志那覇市長はオール沖縄として辺野古新基地建設に反対しながらも、事前の世論調査では断然有利の数字を示しているためだ。
直接は金銭絡みではないが、東京都議会で塩村文夏議員にセクハラ差別ヤジを飛ばした鈴木章浩議員は当初は嘘をついていたが、最後は認めたものの、自民党会派を離脱するだけで、都議の辞任は拒否した。閣僚や側近のブレーンたちが相次いで失言や問題発言を発しても責任を追及しない安倍政権の無責任体制が負のスパイラルに入っていることを証明しているということだろう。そして、何よりも数の力を背景に集団的自衛権行使容認のために、内閣法制局長にも解釈改憲容認派を起用し、公共放送のNHKの会長や経営委員もタカ派で固め、連立与党の公明党にもあの手この手で懐柔を図る安倍政権のやり口は金と権力は正義なりといわんばかりの強権的な専制政治である。安倍政権の力技の前に、立党の精神である平和をかなぐり捨てようという公明党も情けない。
と同時に、かつては利権政治に走っていた自民党内のリベラル派ベテラン政治家たちも安倍批判を封印している情けなさだ。安倍政権が富国強兵策ともいえるタカ派的な新自由主義路線を次々と打ち出しているのも、一強多弱の自民党の中で、安倍政権と官邸が一極集中の権力統治システムを強力に推進しているためだ。最近は安倍総理のドヤ顔が独裁者とダブって見える。
当然、こうした悪しき政治状況に対して鋭い切り込みもなく、批判力も大きくトーンダウンしている大手メディアの劣化と衰弱がある。これはおそらく戦後最悪の事態ではないのか。支持率が45%程度まで落ちてきた安倍政権だが、メディアの批判力がこのレベルでは、米国とともに世界中で戦争をする途は解釈改憲で拡大行使されることになる。集団的自衛権行使も秘密保護法にも歯止めはかからない。これでいいのか、ニッポンの民よ!
Written by 岡留安則
Photo by 週刊 金曜日臨時増刊 検証 暴走する安部政権 さらば、独裁者
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