元『噂の真相』編集長・岡留安則の「編集魂」
沖縄県知事選は安倍自民党が総力をあげて戦ったが、辺野古新基地建設に反対する翁長雄志前那覇市長が、辺野古埋め立てを承認した仲井真弘多前知事に10万票の大差をつけて勝利した。今年1月の辺野古の地元・名護市長選でも新基地建設に反対する稲嶺進氏が自民党が推す候補を破って当選した。これで、辺野古の地元でも沖縄県でも辺野古基地建設に対してはNO!の民意が突き付けられたことになる。
それでも、安倍政権は知事選の結果が出た2日後の深夜に大型トレーラー10台ほどで工事用の機材をキャンプ・シュワブ内に運び込んだ。知事選の結果についてコメントを求められた菅義偉官房長官兼沖縄基地負担軽減担当大臣は「工事はこれまで通り粛々と進める」と言い放った。翌日には県知事選戦で中断していた辺野古のボーリーング調査の作業を開始されたのだ。沖縄の民意も民主主義も理解できない<安倍―菅>の面の皮の厚さには驚かされる。二人とも反民主主義の独裁政治家というしかない。
しかし、工事再開後の反対派市民との小競り合いで怪我人が出たことで、米国側は沖縄防衛局に異例の勧告を出した。すると、工事再開は再び中止となり、解散総選挙が終わるまでは静観することになった。国民や県民には独裁権力を思う存分に振う<安倍―菅>コンビは米国に対してはからっきし弱腰なのだ。まるでどこかの国の傀儡政権みたいな二枚舌の連中なのだ。
沖縄県知事選での敗北が明らかになると、安倍総理は解散総選挙のシナリオを側近に伝えて、自らは長期の外遊に出た。解散総選挙の第一報を打ったのはまたもやナベツネ率いる読売新聞だった。メディアが先行し、官邸や政党幹部のリーク情報によって、安倍総理が外遊から帰国すると、正式に解散総選挙のスケジュールまで発表されて、各政党も解散に向けて一斉に走り出した。解散権は総理の専権事項とはいえ、本人は日本にいなくても政局は遠隔操作によってつくられるのだ。
解散説はこれまでも少なからず流れていたが、政界事情を知るものにとっては電撃的解散発表は晴天の霹靂だったはずだ。野党陣営が大義なき解散と反発したのも当然だった。何よりも、解散の意味するところが不可解だったからだ。消費税増税を16か月先送りするのだから、国民の信を問うべきというのが安倍見解だが、増税先送りに関しては全野党が賛意を示しているのだから、国税700億円を投入して総選挙をやるというのはこじつけにしか聞こえない。
その理由に関しては様々な見方が流れたが、その基本にあったのは、女性閣僚二人の辞任に続いて新閣僚たちの金にまつわるスキャンダルが次々と発覚。内閣改造は身体検査の甘さを露呈し、スタート早々からつまずいたことだ。加えて、沖縄県知事選の敗北が濃厚となったこともある。集団的自衛権行使での米国追従や中国、韓国、北朝鮮、ロシアとの外交がギクシャクしているのも安倍総理の政治的判断力の甘さである。これで、辺野古新基地建設が躓けば、安倍政権のダメージは決定的だ。そのためにも沖縄県知事選の敗北はなかったことにするためのメディア対策が必要だったのだ。むろん、アベノミクスの失敗が表ざたになりつつあった状況も安倍総理の肩を押した。
おそらく、安倍総理はこうした難局を切り抜けるには任期が2年残されているにせよ、今解散総選挙に打って出れば、過半数は維持できると判断したのだろう。野党は選挙準備が出来ていないし、安倍政権の支持率も何とか踏みとどまっている。そうなれば、残り2年の任期を全うするための基盤づくりが出来ると踏んだはずだ。来年になれば、国民を二分する難題が控えている。今のうちに民意を問う事で、安定した政権運営ができると判断したのではないか。
むろん、一強多弱の権力基盤が弱体化する可能性も当然あるだろうが、自民、公明で過半数を取れば、政局運営には支障がないとの見立てだろう。年末のあわただしい時期の選挙は投票率も低い。安倍流の小賢しい政治判断もあったのだろう。
しかし、問題は総選挙の結果である。今回の総選挙は安倍政権の2年間の成果を点検する「中間選挙」の意味合いもある。戦争の出来る国づくりを目指す安保・防衛政策から原発再稼働問題、沖縄の辺野古新基地建設など国民の反対が多い国策が待ち受けている。日本全国の予想は専門家に委ねるとして、沖縄の4つの選挙区では自民党現職の4人が全員落選との厳しい見方が有力だ。
この4人は自民党幹部の恫喝で辺野古新基地容認に「転向」した面々だ。先に県知事選で示された県民の意思から見ても、落選の可能性が高い。知事選での勝利の原動力となったオール沖縄の県民党という支援体制が打ち出されており、4人の自民党議員は確実に苦戦を強いられる。安倍内閣は解散総選挙によって、県知事選敗北という厳しい結果とともに、自民党選出の沖縄の自民党議員にも見切りをつけたという事になる。安倍政権にとって沖縄は関係ないという認識なのだろう。せめて、沖縄県民は安倍政権にNO!を突きつけるために、自民党の4人の議員を落選させることが至上命令ではないのか。
Written by 岡留安則
Photo by JanetR3
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