スポーツ紙、タブロイド紙、週刊誌など、世のオヤジが好んで読むものを「オヤジジャーナル」と名付け、そこで何がどれだけユルく報じられれているか野次馬するとおもしろい。
オヤジジャーナルを馬鹿にする前に、従来からあるメディアを「マスゴミ」などと怒ったりする前に、まずウオッチしてみるのだ。
だってマスコミの正体とは「オヤジが発信してオヤジが受信してるだけ」かもしれないではないか。もしそうなら、オヤジジャーナルを見れば何がしかの事実も見えてくる。
今、オヤジジャーナルが夢中なのは「半沢直樹」である。
原作は池井戸潤による銀行の内幕を描いた企業小説で、TBSが堺雅人主演でドラマ化。視聴率は遂に30%を超えた。
とくに「日刊ゲンダイ」が半沢に熱心だ。ここ最近の記事の見出しをあげてみる。
・半沢直樹は「サザエさん症候群」を吹き飛ばしたのか
・「半沢直樹」なぜ主題歌がないのか
・「半沢直樹」で愛人ホステス 壇蜜の演技力に評価真っ二つ
・「半沢直樹」敏腕ディレクターは福沢諭吉の玄孫だった!
・森三中・大島のゴール大遅刻 ウラに「半沢潰し」密命説も
・織田裕二 TBS世界陸上で「ゲイ」と「室伏」2つの悩み
かなり夢中ではないか。
そしてオヤジジャーナルは、「半沢直樹」を「自分たちの世界の話」にもリンクさせてくる。
週刊現代が「倍返しだ!理不尽は許さない わが社にもいる『半沢直樹』みたいな男」と興奮すれば、東京スポーツは経済欄で「どこまでホント?『半沢直樹』の世界」と題して「無担保で5億円融資できるのか」や「上司に倍返しできるのか」と検証する。
世のオヤジが半沢直樹に自らを投影している、もしくは投影し始めた、と送り手側が判断したのだ。
その「今アツイのは半沢!」というオヤジジャーナルの思いは、いよいよ金がらみの情報にも踏み込んでくる。8月31日の日刊ゲンダイには「半沢直樹ブームでマツキヨ株急騰」というお得な情報が載っていた。
まずマツモトキヨシの13年4~6月期決算の純利益が過去最高だったことから株価が急騰していると記事は書く。しかし「別な理由もある」とゲンダイは株式アナリストにコメントさせているのだ。
曰く、「マツモトキヨシは半沢直樹と同じくフルネームなので、人気化したのでしょう」。
そう、だったのか......。衝撃の事実。
そのコメントを受けて、ゲンダイは独自の解説を続ける。
「社名に名字が入っている会社は結構ある。ホンダやスズキ、(略)トヨタ自動車や村田製作所、江崎グリコもそうだ」
たぶん、それらは最初から人気の株だと私は思う。
しかし「半沢関連株」で金儲けを狙えるという、オヤジの夢をくすぐる記事ではないか。ゲンダイの半沢直樹への夢中ぶりがわかる良記事ではないか。
惜しいのは、この株情報の最後を「10倍返しだ!」というフレーズで締めていなかったことである。
以上、今週の余計な下世話でした。
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Written by プチ鹿島
Photo by オレたちバブル入行組/文藝春秋