社会現象となったNHK連続テレビ小説「あまちゃん」も残り1ヶ月を切り、終盤の"震災編"に入った。ネット上では「最終回パブリックビューイング計画」や、番組終了後に脱け殻のようになる"ポストあまちゃんシンドローム(PASD)"への心配も書き込まれる盛り上がりだが、ハッピーエンドにせよバッドエンドにせよ最終回の後、あまちゃん・天野アキがどんな人生を送るかは誰でも気になる。
そんなファンのために、最終回後のアキの人生を予想しつつ、「あまちゃん」のその後を彷彿とさせる3本の映画を紹介しよう。最終回の後、アキはこんなふうに生きるだろうと想像する手助けになれば幸いだ。
その1・芸能界で頑張る「あまちゃん」
最終回後、芸能界でアイドルとして頑張るアキを想像させるのが、1976年に制作された日活ロマンポルノ作品「ルナの告白 私に群がった男たち」(監督・小原宏裕)だ。
主演のルナこと高村ルナは、オジサン読者には懐かしい4人組アイドルグループ「ゴールデンハーフ」の一員だった。ゴールデンハーフといえば一時はザ・ドリフターズの「8時だヨ!全員集合」のレギュラーになり国民的人気だったA級アイドル。メンバーのエバと加藤茶の絶妙なコントは伝説的である。74年解散後、メンバーはバラバラの道を歩み、「Gメン75」のレギュラーになった森マリアのように女優として成功した者もいれば、高村レナのようにロマンポルノに転じた者もいた。
そのレナがゴールデンハーフ時代の芸能界で経験した乱れた男性関係を暴露した"実録・芸能界"映画が「私に群がった男たち」なのだ。同作は劇中に実在の芸能レポーター須藤甚一郎(現・目黒区議会議員)が登場し、ハーフ・アイドルブームの裏側を解説するセミドキュメンタリーで、ゴールデンハーフも実名で登場する。人気アイドルとなったレナは、さっそく人気歌手"森田健一"(モデルはアイドル好きの森○一?)に狙われ、さらにはプレイボーイ映画俳優・松坂あきら(京都の大御所俳優の息子という設定で、モデルはおそらく○方弘樹?)にも食われてしまう。さらにバンドマンやヘアメイク・アーチストとの肉体関係もハードに描写される。事務所の男管理が厳しくても女好きやバ-ジンキラーがウヨウヨいる芸能界では、新人アイドルはすぐ餌食にされてしまうとこの映画は教える。
ちなみに「あまちゃん」にも素材として登場したセイントフォーのメンバー・浜田範子も解散後のヌードを初公開した時期、男性週刊誌のインタビューで処女喪失の相手は有名ミュージシャンと告白していた。芸能界で生き続けていくなら天野アキも同じような男性遍歴を経験しなければならないと、「私に群がった男たち」は連想させるはずだ。
ちなみに映画には売れなかった結成当時の5人組だったゴールデンハーフの姿が映し出される(すぐにエリーが脱退)。それは当初メンバーが6人だったGMT(徳島出身の宮下アユミが妊娠で脱退)と重ね合わせることができるし、人気歌手森田健一のマネージャー役を演じる鶴岡修のキャラは、80年代の荒巻太一(古田新太)にヘナヘナ加減がソックリ。案外「あまちゃん」スタッフや出演者はこの映画を参考にしているかもしれない。
その2・セクシーアイドルになる「あまちゃん」
一時的に人気が出ても持続が難しいのがアイドルだ。それでも芸能界にしがみつきたい女性タレントの多くは、肌を公開してセクシーアイドルになる。天野アキも「潮騒のメモリー」以降、次の話題作がなければマネージャーの水口に「脱いで頑張ってみないか」と口説かれるだろう。
アキは教育テレビ「みつけてこわそう」のお姉さん役で人気が出たが、NHK教育でお姉さんをしていたタレントが脱ぐのは男性メディアにとって大きな話題だ。同局の「ぴょん太のあんぜんにっき」に出演していた浅見美那はロマンポルノ女優になったし、懐かしの「お~い!はに丸」のスミレちゃんこと羽生愛だって、のちにヌードを公開しセクシービデオを発売した。最終回後のアキにもそんな人生があるかもしれないと予想するファンに見てもらいたい映画が、渡辺奈緒子主演の「nude」(2011年 監督・小沼雄一)だ。
この映画はもとAV女優で現・テレビタレントのみひろの自伝的小説を原作にしたもので、アイドルに憧れる女性がモデルからセクシータレントになり、そこから本番AVに出演するまでを実録風に描いた映画だ。脱ぐだけのセクシータレントが実際に性行為を演じて見せるAVに出演するまでの迷いと決意が丁寧に描かれ、しかもAV出演がアングラ業界への転落ではなく、現代では自己実現の一種だし希望や未来のある仕事として示されるのが特徴だ。映画の所々にみひろ自身が登場し、彼女を演じる渡辺奈緒子に「AVで頑張れば、楽しいこともあるよ」と力強く説得する。素直なアキは感化され、「おらAVさ出てぇ、潮吹き海女になりてぇ!」となびいてしまいそうだ。
この映画でマネージャー役をしているのが光石研。気弱だったり妙に強気になったり涙もろかったり、「あまちゃん」で松田龍平が演じる水口琢磨に重ね合わせることも容易で、最終回後、アキが新たな世界をめざす展開を想像するファンは「nude」で必ずや癒されることだろう。
その3・故郷に帰る「あまちゃん」
最後に、アキが故郷に帰る場合を想像してみよう。引退後故郷で水商売を始めるのは売れなかったタレントの典型的ケースだが、アキも芽が出なかったら北三陸にUターンして、夏ばっぱのスナック「梨明日」を手伝うことは充分考えられる。震災後数年間、北三陸の町には他県から建築・土建関係者が大勢やってきて、復興特需といわれる状態になるはずだ。そこでアキが種市先輩や常連客以外の新しい男性と出会うような展開も最終回後の「あまちゃん」世界に考えられる。
そのような想像を後押しする映画が秋吉久美子主演「さらば愛しき大地」(1982年 監督・柳町光男)だ。
同作の秋吉久美子は母(佐々木すみ江)のスナックを手伝っているが、そこへ現れるダンプ運転手の根津甚八。この映画の舞台、80年代の茨城県鹿島地方はコンビナートの建設ラッシュでダンプの土砂運搬はバブル状態。だから根津は金と精力ですぐに秋吉をモノにする。「あまちゃん」の「スナック梨明日」だって震災後、アキの美貌が評判となって肉食系土建・建築作業員のたまり場になり、繁殖能力が高いオスがすぐかっさらってもおかしくない。副駅長の吉田と観光協会の栗原ちゃんのように、土地柄、あっと言う間にアキがデキ婚するかもしれないのだ。
「さらば愛しき大地」では、茨城のズーズー弁を使い、可憐さと奔放さが同居する秋吉久美子のキャラがアキの未来と重なって仕方がない。ゆえに映画のストーリーを模してその後のアキの運命を想像すれば、やがて復興特需は終了し、ヤッツケでもボロ儲けしていた夫は仕事上のヘマから失職し貧乏暮らしに逆戻り、彼女がホステスとなって土建の方々になまめかしい接客して生計を支えるも、特需の裏側で暗躍するヤクザのばらまくシャブの虜になった夫が電波を受信して包丁片手にDV、どうにもこうにも不幸のドン底に落ちる...というヘビィな感じも充分にありえる。こんな天野アキはいやだ!といっても、この展開は地方の農村・漁村では充分に現実的だ。だから「さらば愛しき大地」という映画は高い評価を受けたのだ。早くPASDを脱し、「あまちゃん」離れがしたいならば、「さらば愛しき大地」を見てアキのダークな未来図を予習するのが効果的と提案しておこう。
被災地復興の遅ればかりでなく、福島第一原発の汚染水問題や消費増税、TPPなど日本は深刻な問題が山積。いつまでも「あまちゃん」に逃避していないで、現実に~帰ろ~う。
Written by 藤木TDC
Photo by ルナの告白 私に群がった男たち/日活株式会社
羽生愛 愛乱舞/笠倉出版社
nude/Happinet(SB)(D)
さらば愛しき大地/エースデュースエンタテインメント