「熱中症と甲子園」プチ鹿島の世相コラム～余計な下世話！連載6回目

2013年08月27日　スポーツ　プチ鹿島　甲子園　野球

　高校野球が終わった。

　今回は「熱闘甲子園」ではなく「熱中症と甲子園」についてレポートしたいと思う。

　とにかく暑かった今年の夏、新聞を見ると各所の熱中症の報道が相次いだ。ふと疑問に思った。「甲子園での熱中症はどれぐらい報道されているのか？」

　そんなわけで、大会期間中の8日から22日までの朝日・読売・毎日・産経各紙を調べてみた（東京版・夕刊も）。

　驚くことに「甲子園で熱中症」の記事は全紙なかった。普通すぎてわざわざ新聞記事にはしないのだろうか。

　ではネットを見てみる。こまめにニュースを配信する性格上からか、ネットでは各紙が「甲子園で熱中症」をけっこう配信していた。

　くわしく「症状」が出ていたのは次の記事だ。

【熱中症:甲子園観客「頭ぼーっと」　手当て６日で181人】

　毎日新聞　2013年08月14日　11時16分配信

　以下抜粋する。

《今大会、甲子園の救護室で、熱中症などの症状を訴えて手当てを受けた観客は、開幕日の８日が46人。以降、9日23人▽10日21人▽11日40人▽12日25人▽13日26人－－と、6日間で計181人に上った。昨夏の同期間の76人と比べて大幅に増えている。「頭がぼーっとする」「立ちくらみがする」など軽度の人が多いが、西宮市消防局によると、病院に搬送された人もいる。》

　14日の時点でこの人数。最終日まで増えていることは間違いない。

　ちなみに「10日の21人」はサンスポでも「甲子園で２１人が熱中症の症状を訴える」と配信している。

　というのは、この8月10日は6年ぶりの最高気温40度超えがあり、今年一番の暑い日だったのだ。言ってみれば「暑い各地の記事」が作りやすい日だった。

　では翌11日の朝日新聞はこの暑い日をどう報じたか。夏の高校野球主催の新聞社でもある。甲子園の「熱さ」だけでなく「暑さ」も伝えているのか？

『サウナだ、これは』という見出しで始まるその記事は、全国一の気温を観測した甲府市民のコメントを載せたあとに水戸市大場町、奈良県広陵町の記事が続く。さぁ次は甲子園の暑さか？

　しかしなぜか「東京都江戸川区の野球場」の話になる！

『試合中の小学生男児5人が熱中症の病状を訴え病院に搬送』。

　確かに大変なことだが、それなら同じ日の野球場「甲子園で21人が熱中症の症状を訴える」にはなぜ触れない？

　ほかに朝日の「野球・熱中症」記事を調べていくと13日に、『相模原で７人、熱中症で搬送　野球練習中の中学生　／神奈川県』があった。ちなみに同じ日に甲子園では25人が熱中症で手当てを受けている。

　やはり主催の朝日新聞にとっては「甲子園・熱中症」はタブーなのか？もちろん「手当を受けた」のと「病院へ搬送された」のではニュースバリューが違うという言い分もあろう。

　ではこれはどうか。19日の試合で常総学院の投手が熱中症の疑いで降板したのだ。各紙の見出しを並べてみよう。

『常総学院　エースと力尽く　２点リード九回裏に熱中症？』（東京新聞）

『常総学院の飯田が途中交代　熱中症の疑いも』（毎日新聞）

『常総の投手熱中症疑いで交代』（ NHKオンライン）

　朝日はどうか。

『好投の常総学院・飯田、９回に無念の降板』（朝日新聞）

　なんだか浪花節っぽい。記事を読んでみる。

「２点リードの９回前、投球練習中に右もも裏がつった。熱中症の恐れがあったため、一度ベンチへ。それでも「投げたい」と志願した。」

　美談仕上げに感じるのは私だけだろうか？

　朝日新聞は甲子園の熱さを伝えても暑さは伝えない。

　しかし、大会期間中の記事をもういちど見てみると意外な人物が正直に「申告」していた。

　8月14日のスポーツ欄。各界著名人が甲子園で観戦し高校野球への思いを語る連載記事で「スギちゃん」が冒頭にこう語っているのだ。

『この暑さのなかで、すごい熱戦だ。そんな甲子園、ワイルドだぜぇ。』

　やはり甲子園はワイルドに暑かった。

　以上、熱中してお届けした今週の余計な下世話でした。