スポーツ紙、タブロイド紙、週刊誌など、世のオヤジが好んで読むものを「オヤジジャーナル」と名付け、そこで何が報じられているか見ていくとひとつ流れがある。世の中には「東スポと文春しか報じてない」物件が結構あることに気づく。そして東スポと文春が報じてしばらく経ったあとにそのネタが一般化することもある。歌手のASKAの例の事件などがそうだ。
この東スポ&文春の「バケツ・リレー」、先週はいつもと違って興味深い展開があった。「仮面女子」である。
まず1月8日発売の文春は『オリコン1位「仮面女子」メンバーが事務所社長の"性接待"強要を告発!』(週刊文春・1月15日号)という記事を書いた。
内容は、《仮面女子はAKB48と同様、東京・秋葉原を拠点に活動する人気急上昇中のグループ。だが、運営会社社長の池田せいじ氏によるメンバーの私物化が酷かったという。テレビ出演時のヤラセ指示、交際要求、性接待強要といった専横が日常的だった。》というもの。
こういうえげつない&下世話なスクープを文春が出すと、その日に出る東スポも後を追うのが恒例だ。果たして、同日発売の東スポの一面見出しは仮面女子だった。
『諸星禁断のジャニ批判 「俺もだまされた」仮面女子相手に暴走』(1月8日)
ところが、読み始めてみるとなんかニュアンスがちがう。内容は前日の1月7日におこなわれた「仮面女子」シングルヒットイベントを取材した記事だった。そのイベントに元「光GENJI」の諸星和己が参加し、メンバーに対して「売れてくると、悪い大人たちがいっぱい付いてくる。そういうやつにだまされないように、心にも仮面をして。落ちぶれたときに絶対に裏切られるから。俺が現にそうだから。俺が一番苦労しているところだから」などのアドバイスをした、という内容。
同日の文春を読んだ者は「いやいやすでに『悪い大人』はいたらしいぞ」と思ってしまう、結果的に絶妙の読み合わせとなった。
そして翌日9日発売の東スポの一面は『仮面女子 性接待疑惑核心』として「衝撃の内部証言入手」と報じている。
こうしてみると8日の東スポは、文春の仮面女子の記事を知らずに、イベント取材をもとに「悪い大人に気をつけろ」と書いた可能性がある。
一方で文春の記事を知っていて書いた可能性も高い。東スポWEB版を見るとイベント当日の7日の夜に早々と「悪い大人」記事を書いているからだ。
《オリコン1位「仮面女子」に諸星和己が忠告「売れると悪い大人がついてくる」》(1月7日17時25分配信)。
この時点で翌日発売の文春の内容を知っていたが、東スポはまず「悪い大人に気をつけろ」にこだわって第一報を出した説!
「前フリ、オチ」を2日間にわたって東スポは展開したのか? いや、やっぱり文春のスクープを知らずに最初はのん気に報じたのか?
行間を読ませる新聞・東スポのお話でした。
Written by プチ鹿島
プチ鹿島●時事芸人。オフィス北野所属。◆TBSラジオ「東京ポッド許可局」◆TBSラジオ「荒川強啓ディ・キャッチ!」◆YBSラジオ「はみだし しゃべくりラジオキックス」◆NHKラジオ第一「午後のまりやーじゅ」◆書籍「うそ社説 2~時事芸人~」◆WEB本の雑誌メルマガ ◆連載コラム「宝島」「東スポWeb」「KAMINOGE」「映画野郎」「CIRCUS MAX 」
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