プチ鹿島の「余計な下世話」

20年後の地下鉄サリン事件で見る東スポと朝日新聞|プチ鹿島の『余計な下世話!』

2015年03月17日 プチ鹿島 地下鉄サリン事件 朝日新聞 東スポ

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 1995年3月20日の「地下鉄サリン事件」から今年で20年経つ。各局で特番が続々と放送されているが、フジテレビ『ザ・ノンフィクション』の「20年前 地下鉄サリン事件はこうして起きた」(17日)は異色だった。オウムがアニメになっていたのである。

 このシリーズは過去に何回か放送されており、取材・構成・演出はジャーナリストの青沼陽一郎氏。裁判で明らかになる教団の実態は「まるで漫画」だとして「麻原法廷漫画」にした。

 オウムを漫画で伝えるというのは確かに発見だ。他番組の再現ドラマを見ていると、オウムを真面目に伝えているようでむしろ劇的にカッコよく伝えてないか? という違和感があったからだ。あの集団はもっとマヌケである。マヌケだからこそ怖かった。

 さて、あの当時の私の最大のショックは「世の中が乱れると東スポと朝日新聞の見出しが同じになる」ということだった。オウムは自分の組織に「外務省」とか「大蔵省」などと省庁の名前を付けていた。まったく子供じみていた。しかし、ひとたび重大なテロ事件を起こすと「オウム科学技術省がサリン製造か」という見出しが朝刊紙に載ってしまった。

 それまでは「国家ごっこかよ」と苦笑していれば終わりだったものが、事件を起こしたことでマヌケなネーミングも真剣に報じられ始めたのである。あのときのザワザワした気持ちは忘れられない。

 私は新聞の味わう順番として、まず朝刊紙で「前提」を読む。そしてスポーツ紙や夕方のタブロイド紙で徐々に「変化球」を味わう。言ってみればスキャンダリズムをアップしてゆく。新聞それぞれの役割や価値を楽しむ。

 しかし、オウムが事件を起こしたことで一般朝刊紙にも、たとえば「オウム科学技術省」という文字が大々的に載ってしまった。朝日も読売も東スポも同じ見出しになってしまったのである。「ああ、世の中が大変なことになっている」と思った。すべての価値が乗っ取られた感。もしかして戦争時のメディアとはこんな感じだったのか......と想像し、ひとり絶句していた。すべてはマヌケが始まりだから衝撃だったのである。「自称」なのに重大な事として伝えざるを得なかった。(あれから20年後メディアは自称「イスラム国」をどう呼ぶかで自問自答した。オウム事件を思い出した)

 オウム事件以降、朝日新聞と東スポが同じ見出しになるのが増えた。それだけ世の中に行間や遊びがなくなっている証明だと思う。新聞のそれぞれ違う価値観を味わえる日々を、下世話に願いたい。

Written by プチ鹿島

Photo by Youtubeより

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プチ鹿島●時事芸人。オフィス北野所属。◆TBSラジオ「東京ポッド許可局」◆TBSラジオ「荒川強啓ディ・キャッチ!」◆YBSラジオ「はみだし しゃべくりラジオキックス」NHKラジオ第一「午後のまりやーじゅ」◆書籍「うそ社説 2~時事芸人~」◆WEB本の雑誌メルマガ ◆連載コラム「宝島」「東スポWeb」「KAMINOGE」「映画野郎」「CIRCUS MAX 」

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イスラム国とは何か

 20年前のイスラム国。

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