プチ鹿島の「余計な下世話」

"悪名は無名に勝る"ドナルド・トランプ氏がウケている理由|プチ鹿島の余計な下世話!

2016年02月02日 ドナルド・トランプ プチ鹿島 大統領選

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「ドナルド・トランプ」と聞くと、半笑いするか眉をひそめる人がほとんどだと思う。「全てのイスラム教徒のアメリカ入国を禁止すべきだ」とか「不法移民対策のためにアメリカとメキシコの間に大きな壁を建てる」とかトランプが言ってることは無茶苦茶だ。

 でもアメリカ大統領選の共和党指名候補争いではまさかのトップを走っている。どうせそのうち落ちてくると言われながら、なんだかんだでここまできている。

■他の候補者が批判すればするほど存在が目立つ事態に

 先週金曜、私は「謎のトランプ人気」の一端を見ることができた。FOXニュースが共和党指名候補を争う人々によるテレビ討論会を開催したのだが、トランプはボイコット。本人はその裏でアイオワで独自イベントをぶつけ、CNNなどがこれを中継した。

 私はこの模様を『Newsザップ!』という番組(海外ニュースを紹介するBSスカパー番組)に出演していたのでどちらのイベントも生中継で見た。するとFOXの討論会では不在のトランプが主役だったのである。他の候補者がトランプを批判すればするほどその存在が目立つ事態。語られることで存在感がますます大きくなっているのだ。一方、トランプ自身は集会で黒人女性を登場させて支持を語らせて場内を騒然とさせるなど、刺激たっぷりの見せ方を実践していた。お得意のリアリティーショーを大統領選でも仕掛けているのだ。

 トランプがウケている言説にも思い当たることがある。政治的・社会的に公正な言論を求められる時代になるほどうっかりしたことは言えない。世の中が言葉を牽制しあっているときに、トランプのような暴論を叫ぶ人が出てきたら思わず溜飲を下げてしまう人がいるのではないか。みんなが言えない「本音」を言ってくれたと勘違いしてしまう人も出てくるのではないか? 失言できない社会の空気が「確信的な失言」にかき乱されている気がするのだ。

「悪名は無名に勝る」を実践するメディア戦略と、「オレたちの本音を言ってくれた」と少なくない人々に思わせる刺激的な言葉の駆使。トランプ現象はすでに半笑いですますことはできないと思うのである。

Written by プチ鹿島

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プチ鹿島●時事芸人。オフィス北野所属。◆TBSラジオ「東京ポッド許可局」◆TBSラジオ「荒川強啓ディ・キャッチ!」◆YBSラジオ「はみだし しゃべくりラジオキックス」◆NHKラジオ第一「午後のまりやーじゅ」◆書籍「うそ社説 2~時事芸人~」◆WEB本の雑誌メルマガ ◆連載コラム「宝島」「東スポWeb」「KAMINOGE」「映画野郎」「CIRCUS MAX 」

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