京都大学経営管理大学院特命教授・湯山茂徳氏の本『エンタテインメント・ビジネス・マネジメント講義録』(15年/朝日出版社)を購入。普通ならまず手に取ることもない本をボクがなぜ買ったかというと、そこにケイダッシュ川村龍夫会長をゲストに招いた非公開の講義の模様が再録されていたわけですよ!
あの川村さんが田辺エージェンシーの田邊昭知社長について「田邊(昭知)さんは、現在も日本の芸能界で何かあると、テレビ局でも芸能プロダクションでも、全ての物事を田邊さんにお伺いを立てて決める、というくらいの実力者です。日本の芸能界は、この人が存在する限りうまくいくのではないか、というくらいの人です」とコメントしてたりするからホントやばい!
なかでも興味深かったのは、売れてきたタレントの「我がまま」についての考え方でした。
「最初彼ら(タレント)には、ある一定の給料保証をします。何も仕事が入らなくても、です。だいたい5年くらいで芽が出てくると、この給料は10倍くらいになります。もちろん稼ぎ自体がこの10倍くらいになったからです。これだけ稼げるようになって、原料費が上がったところで、彼らは力を持ち始めます。ようやく俳優として一本立ちして、主役等をやります。その状況で、実力をともなっていない彼らの自信のなさがどこに表れるかというと、仕事選びです。『この仕事は、やりたくない』などと言い出します。そして、この感情を突き詰めていくと、『辞めたい』ということになります。僕は、彼らが『辞める』と言い出した時は、絶対に止めません。しかし、一回話してから時間を置いてまた話を聞くと、『もう一度やり直す』とだいたいは言います。この自惚れを、僕は『虚実の間を彷徨している』と表現します。芸能人というものは、自惚れをなくしてしまったらブレイクしません。ですから、どこまで彼らの自信を深めて、うまくコントロールしていくかが大切です」
つまり、自惚れや我がままは悪いものではないから、それをどう守っていくかがポイントってことみたいなんですよね。
「俳優が成功すると、彼らが部屋に入ってくるだけで、完全に圧倒されるくらいオーラを発します。この喜びを知ると、多少嫌なことがあっても、吹っ飛びます。その代わり、我がままが、すごいことになります。こんなことを、よく言えるなというくらい言います。若いマネージャーは大変です。しかし、そういうふうになった人間は、しめたものです。自信のついたことが、本当に良くわかります。現場は大変ですが......」
「僕は『こんな女性と、どうしたらうまくやっていけるのか?』と言われるくらい生意気な女優さんが好きです。こういうことを言ったら、ある女優さんに、『私はそんなに生意気じゃありません』と言われてしまいました。女優さんで本当のスターは、わがままなものです。女優として名声を得て、金も入り、恋もしたい、そうなったら、普通の女性ではいられません。どこかを犠牲にしないと、何かが成立しなくなります。そういう困難さこそが、女優としてのエネルギーになっていくのです。全部満足したら、良い芝居などできません」
川村さんがアントニオ猪木のことが大好きなのは、猪木さんに圧倒的なオーラがあって、我がままで、とてもコントロールできないからなんだってことがよくわかりました!
Written by 吉田豪
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