「キミは障害者で可哀想だね」と言われたい私のような障害者がいることも知ってほしい|文◎あもり(欠損バー『ブッシュドノエル』所属)
生まれつき右手の親指以外が無く、腕の長さも違うあもり
皆さん初めまして、"あもり"と申します。
障害を持った女の子がカウンターに立つ『欠損BAR・ブッシュドノエル』で働いています。生まれつき右手の指がありません。ご存知の方も多いと思いますが、欠損BARの運営をしている岡本タブー郎さんに、
「あもりは欠損BARの中でも1番闇が深いし、一度心の中のものを全部文字にしてみたら?」
と言われたので、思っていたけど誰にも言わなかったことを書いてみようと思いました。つたない文章ですが、最後までお付き合いして頂けたら嬉しいです。
私は昔からいつも人と比較して、全てにわたって劣っていると感じ、自分に対して常にネガティブな感情を持って生きています。
だからでしょうか?
今はダメだと言われている「障害は可哀想」という考え方、この"可哀想"に対して私はワクワクしてしまいます。『ネガティブな自分を認めてくれている』......そんな気持ちにしてもらえるんです。「キミは障害者で可哀想だね」って言葉、キライじゃありません。
私がこんな感情を持って生きてしまっているのはなぜか、それにはきっかけになった人がいます。
乙武洋匡さんです。
手足のない彼の姿は、当時小学生だった私には衝撃でした。自伝本を出版されて一躍時の人、『五体不満足』というタイトルとはまったく正反対の笑顔で佇んでいる表紙。何が不満足なのか、なぜこんなに笑顔なのかと、不思議でなりませんでした。
頭も良く野球やバスケをしたり、何にでも挑戦していく姿はヒーローみたいで、ひたすら障害を隠すことに必死だった自分にとっては、あまりにも眩しく、すぐに目をそらしました......。
そんな私の小さな心の動きを知るわけもなく、我が家のテレビの横の本棚にあるイチローさん、野茂英雄さんの自伝本の横に『五体不満足』の文字が並ぶようになりました。
私の家では障害の話を家族間でまったくしません。きっと、これは母からの何らかのメッセージだったんだと思います。「あもりにもこうなって欲しい」「明るく障害を乗り越えて欲しい」ということだったのでしょう。小学生だった私にそれが分かるはずがなく、今の今まで"母からの推薦図書"は読んでいません。
ただただ、テレビを見るたびにチラチラ視界に入る鬱陶しい存在。
そんな風に見ないように見ないようにしてきたので、私は乙武洋匡さんがどんな人なのかを詳しく知りません。数年前にスキャンダルがあった時も、色んな衝撃もありましたが、私の中では「あぁ彼はただの人間だったんだ」と、スゥっと心にあったモヤモヤがなぜだか少し減りました。
欠損バーを始めた頃は手や顔を隠すことが多かったが、最近は少なくなってきたと言う
来月老朽化のため実家を壊します。
必要な物だけ持ち帰ってあとは全部まとめて壊すようです。アルバムや写真、お人形、いくつかはすぐに思い浮かびました。そして『五体不満足』。こちらも持って帰ろうと思います。
乙武さんみたいに笑うことができなかった私。母からのメッセージに必死に抵抗していた私。だけど、今だからやっと読んでみようかなという気持ちになりました。
あの時読んでいたら何かが変わっていたかもしれない......そうは思わないようにしています。
『五体不満足』を読み終えた私にも、もう少し笑顔が増えるでしょうか。
文◎あもり(欠損BAR『ブッシュドノエル』所属)
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