なぜかわからないけれど、目を向けてしまうCMってありませんか。例えば、「ピアノ売ってちょ~うだい」のタケモトピアノや「文字が小さーーい!」のハヅキルーペなどのCMが流れると、思わず足を止めてテレビ画面を見てしまいます。
そして、筆者が最近気になっているのは精米卸の老舗企業「神明」のCMです。出演しているのは同社の社長さんと元格闘家の高田延彦さんで、ふたりが牧歌的な田舎の風景をバックに「食育」について語るというもの。おっさん2人がスーツ姿で田んぼのあぜ道に座っているシーンはかなりシュールで、最初見たときには「ACのコマーシャル?」と思ってしまいました。
というか、CM中で2人は子どもたちと一緒に田植えをするのですが、社長さんはIT企業社長風のジャケットとクロップドパンツというオシャレスタイルで、そんな恰好で田植えはしないだろと誰かつっこんであげればいいのに...。
そんなユニークなCMなのですが、2人のトークテーマは「お米の消費量が減ってきている」という結構深刻なものです。毎日お米を食べている筆者としては気になるテーマだったので、今回はお米についてのデータをちょっと調べてみることにしました。
<グラフ1>農林水産省「平成28年度 食料需給表」をもとに、筆者がグラフ化しています
グラフ1は「1人あたり1年間の米の消費量」の推移を現したものです。年間消費量のピークは昭和37年度で118.3㎏。そこから年々減少の一途をたどり、平成28年には54.4㎏にまで落ち込みました。つまり昭和30年代後半から昭和40年代初頭と比べると、いまの私たちは半分以下しかお米を食べていないのです。
ちなみに、旅行に関する口コミサイト「トリップアドバイザー」が2015年に「世界で一番お米を食べているのはどこの国?」という調査を行っていて、1位はバングラディッシュ、2位はラオス、3位はカンボジアでした。日本はというと、韓国(15位)や中国(17位)よりもはるかに下の50位という結果であり、もはや米食文化の代表国とはいえないのが現状です。
それでは米の生産量はどうなっているのでしょうか。お米の供給に関するデータであるグラフ2を見てみましょう。
<グラフ2>農林水産省「平成28年度 食料需給表」をもとに、筆者がグラフ化しています
まず、青色の折れ線グラフは国内生産量で、昭和60年代までは1000万トンを超えていましたが、近年は大体800万トン台を推移しています。一方、輸入量は平成4年まで10万トン以下でしたが、「平成の米騒動」と呼ばれて深刻な米不足に陥った平成5年からドッと増加しました。ここ10年は80~90万トンあたりを推移していて、結構な量を輸入に頼っているようです。
近年の国内生産量も輸入量も横ばいが続いているのに、お米の消費量は年々減っていることを考えると、日本で米作りをしている農家の人たちには厳しい状況が続いていくのではないでしょうか。
日本は高度経済成長を迎えて豊かになり、食卓が多様化していくなかで、パンや麺類などを主食として食べることが多くなりました。また、最近はメタボリックシンドロームが話題を集め、糖質制限ダイエットが流行したこともお米の消費量が減少した原因の一端を担っているのでしょう。
時代の流れを考えれば、現代人のお米離れは仕方のないことなのかもしれません。とはいえ、お米で育ってきた世代としては、なんだか切ない気分にさせられてしまいました。(文◎百園雷太)
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