アベノミクスで景気は回復したのだろうか。少なくとも庶民には実感としてない。ましてや、貧困の象徴である「ホームレス」は相変わらず社会の底辺で存在し続けている。筆者は東京、神奈川、埼玉等のホームレスを取材してみた。その知られざるホームレスの最新事情とは?
ホームレスにも地域によってかなり特色がある。たとえば北海道のホームレスの場合、岸壁のテトラポットに住み着いているケースがある。それで冬を越しているのだから驚くばかりだ。
関東近県のホームレスの場合、河川敷や大規模な公園にブルーシートやトタン板、ダンボールで居住スペースを作り生活しているケースが多い。また、犬や猫を飼育しているホームレスも目立つ。これは人恋しいからか、全国に見られる事例だ。
神奈川県の海沿いに住んでいるホームレスたちは、自ら「ホームレス界のセレブだ」と言い張る。彼らは太平洋に面した湘南海岸を根城としている。海からの潮風や砂を防ぐ砂防林に住んでいるため、心地よいのだという。
彼ら湘南海岸のホームレスは経済的にも自立している。朝は付近に捨てられた家電製品を拾って修理、それをリサイクルショップに売ることで現金を得る。食べ物は眼前に広がる海で釣りをして、新鮮な魚介類を食べているという。彼らのネグラを訪問すると、大多数が扇風機やストーブを完備していた。また、夏場に海水浴客が落とした小銭を拾い集めたり、海辺に流れ着く漂泊物を細工して売り捌くこともある。なんとも恵まれた生活を送っているのだ。
では、東京のホームレスはどうだろうか。都内でもきちんと整備された大きな公園や河川敷に住んでいるホームレスは団結力が強く、結束が固い。それが顕著なのが隅田川のホームレスだ。彼らの中で設けられた秩序や規則を守り、コミュニティを重視する。ホームレスとはいえ、一般的に「隅田川系」は孤独を好まないようだ。たとえば誰かが病気で倒れると、「隅田川系」の場合は数人で看病する。どこから調達してきたのか、怪しげな医薬品まで十分に揃っている。
「隅田川系」は、コミュニティを仕切るリーダー的な人物がきちんと存在している。その団結力でもって、行政の立ち退きには全員で断固として立ち向かっていく。その強固な組織力はまるで「ホームレス組合」のようでもある。
実際にある新参ホームレスがダンボールを手に寝床を探していると、すぐに人間が飛んできて、「あそこにいる顔役に何かを持って挨拶に行け」と指示された。その通りにすると、すぐに寝場所を確保してもらえたという。なんという手際の良さだろうか。
同じ河川敷でも、埼玉県の荒川沿いとなると事情が変わってくる。ここでもブルーシートが点在していて、ホームレス人口の多さを感じさせるが、ここにルールや秩序はない。どこに寝床を構えても問題ないがそれもそのはず。近くに携帯を充電する場所が全くないので、ホームレスにとって魅力的な場所ではないのだ。
今ではホームレスも「携帯電話」を手放せない時代となっている。彼らが携帯を充電するのは、パチンコ屋やスーパーにある、コンセント付きの個室トイレだ。
「一昔前は駅やオフィスビルの掃除用の電源が重宝したけど、最近は『盗電』扱いで通報されることもあるので敬遠している。今ではスマホ所持が当たり前。炊き出しの情報や日雇いの仕事を探すのに携帯は手放せない」(隅田川沿いで暮らすホームレス男性)
特に「若者ホームレス」が増加している昨今はスマホも広く浸透しているため、無料Wi-Fiが使えるエリアが好まれる傾向にある。となると、同じ関東の河川敷でも、「隅田川系」の人気は圧倒的に高い。ホームレスの世界も「モバイル時代」に突入しているのだ。
Written by 玉川守
Photo by Toffee Maky
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