東京下町にあるスーパーで、二点のチョコレート菓子をポケットに入れて盗んだ小学四年生の男の子を捕捉した。被害額は三百円足らずであるが、百円しか持っていないというので、盗んだ商品を買い取ることはできない。
「お金を払わないまま、お店のモノを食べたらダメだってことは知ってる?」
「うん、知ってる。あの、これから塾に行くんだけど、何時に帰れますか?」
その口ぶりからすれば、悪いことをしたという認識はあるようだが、ちょっとした悪戯くらいの感覚でいるらしい。
子供のイタズラといえるレベルの犯行であるし、年末の忙しい時なので、親に連絡して引き取ってもらおうと店長は言った。そこで少年の人定確認をしてみると、自宅住所や電話番号などはわからないらしく、通っている小学校名しか答えられない。数年前ならば、学校に連絡して、身柄を引き受けてもらうところだ。
しかし、最近では捕捉された生徒の家庭環境(主にモンスターペアレンツ、ネグレクト)や、警察による全件通報指導を楯に引き受けを拒否されることが増えた。また、進学への影響を危惧する保護者から苦情を受けることもあり、現在では、学校に通報することはないに等しい。自分の子供と同じ年齢の子を警察に引き渡すのは気が引けるが、そのまま帰すわけにもいかないので、やむなく通報することになった。
通報してまもなく、少年課に所属する三人の刑事と、二人の警察官が現場に臨場した。五人の大人が、十歳の少年を取り囲んで、次々と詰問していく。自分を取り巻く状況の変化に合わせて、少年の様子も段々と深刻になってきており、犯した罪の重さを実感しているようだ。すると、少年の所持品であるリュックサックを調べていた警察官が、一枚のDVDを発見して目を見開いた。
「ねえ、これは何?」
「ぼくのじゃない......」
警察官が提示したDVDには、レンタル品であることを示すラベルが貼ってあり、そのタイトルをみれば「ギリギリモザイク」という文字が読み取れた。言うまでもなく、年齢的に見てはいけないはずのアダルト作品である。
「僕のじゃないって、じゃあ、誰のものなの? 君のリュックに入っていたんだから、君のものでしょう?」
「公園で拾ったの......」
少年を問い詰めた女性刑事は、我々の存在を気にして、それ以上の追及をしなかった。しかし、ディスクの状態は綺麗で、どうみても落し物にはみえない。もしかしたら、レンタルショップで中抜きしてきたブツかもしれないと、俺は思った。この少年は、一体どうやって「ギリギリモザイク」を入手し、どういうつもりで所持していたのだろうか。その真実を知る由はないが、射精の快感に取りつかれ、中抜きしたブツで抜くつもりだったとすれば、なにか末恐ろしいものを感じる。この少年が再犯に至ることなく、健全に成長してくれることを願うばかりだ。
Written by 伊東ゆう
Photo by jarmoluk
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