「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2013」で、オフシアター部門のグランプリに輝いた「暗闇から手をのばせ」という映画をご存知でしょうか。
この映画は、障害者専門のデリヘル嬢と手足が不自由な障害者との心の交流を描いた問題作で、そのテーマのタブーさからほとんど宣伝も行われず、ミニシアターで細々と上映されていました。
この映画で扱うテーマは「障害者の性」。実は障害者向け風俗というジャンルは実際にあるのですが、なかなかうまく運営できない実態があるようです。
そして、風俗ではなく「射精の介助」という介護ボランティアも実際に存在します。衝撃的なそのボランティアのお仕事の内容や必要性について考えてみましょう。
脳性まひや筋ジストロフィーなどにより手足が自由に動かない障害者のために、射精の介助を行うことを「セックスボランティア」や「セックスヘルパー」と呼びます。
射精介助とは、ヘルパーがこうした重度身体障害者の自宅などを訪ね、介護用手袋をした手で性器を綺麗に洗浄。その後、手で刺激して射精に導くことを指します。
障害者の気持ちを考慮して、多くは女性ヘルパーが派遣されるため、現状では風俗営業の許可が必要となっていますが、ヘルパー側としてはあくまで介護の一環的な位置づけであるようです。障害者に性欲があること、性的機能があることは当然のことですが、社会はそのことに目を背けてきました。
そのため、以前はこうした重度の障害者に対して介護や看護をする女性が、性的問題に直面しては困惑し、場合によっては処理せざるを得ない状況に追い込まれていたようです。
「それって介護じゃなくて風俗でしょ? デリヘルなどの風俗を活用すべきなんじゃないの?」
そう考える人も多いでしょう。しかし、障害者相手の風俗は問題が多く、なかなか成り立ちにくいようです。障害の程度は人それぞれ違いますし、そういった知識がない風俗嬢がうまく対応出来ずにお互いを傷つけてしまうこともありえるわけです。
例えばその障害者が言葉もきちんと話せなくてコミュニケーションが取れなかったり、特殊な医療器具を装着していて細心の注意が必要であったり、行為のあと 大人用おむつを処理しなければならなかったりと介護的側面があるため、障害者を相手にすることは一般の風俗嬢にはハードルが高すぎます。
また、重度の障害者は収入も少なく、風俗にお金を費やすことはなかなかできません。障害者がデリヘルを家に呼ぶ場合は、身動きの取れない障害者にとってリスクが高く、何をされてもどうしようもないという現実があります。
前述した映画「闇から手をのばせ」の監督が、「障害者の抱える性の問題をすべて書ききることは不可能だから、さわりだけ描いた」と語るほど、奥の深い問題なのです。
日本には現在、18歳以上の在宅身体障害者が349万人もいるそうです。彼らの多くは、身体は不自由でも、健常者と変わらない知能を持ち、心を持っているのです。障害者の性処理は風俗に当たるのか否か? みなさんはこの問題についてどう感じましたか。
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Written by 杉本レン/Gow! Magazine
Photo by njaj