【書類送検】日馬富士暴行事件・中間報告で判明したのは「ヤキ」だった
●貴乃花「弟子は必ず守る」の真意
日馬富士事件。日馬富士は来週中に書類送検されるようです。
その前に、相撲協会理事会が中間報告をしました。しかし、それは被害者の声がない一方的な物でした。これを発表して良いと決断した人の見識を疑います。逆効果でしょう。
そこで被害者、貴ノ岩側の言動も鑑みた報告書に直してみます。
1・錦糸町のバー→酔った貴ノ岩についての言動が、横綱白鵬の耳に入った。いずれ説教をしなければと白鵬側が思っている。それだけでなく、普段からの言動がイラついていた。
2・鳥取一次会→白鵬が、自分の声がけでは来ないかも知れないので、鳥取城北高校の先生に音頭を取ってもらって貴ノ岩を参加させる。日馬富士、鶴竜の横綱までそろっていた場に貴ノ岩が少し怪訝な感じを受ける。
3・鳥取一次会一次会で白鵬がここぞとばかり、貴ノ岩に説教。
4・鳥取二次会屋→一次会の雰囲気をひきずったまま二次会へ。ほどよく酔っぱらった二次会のラウンジ。またも白鵬が説教を開始。貴ノ岩はうんざり。
5・鳥取二次会暴行→日馬富士も酔っぱらう(※日馬富士は酔っていないと引退会見で主張)。スマホをいじっているように見えたので貴ノ岩に日馬富士が注意し、手を出す。(※貴ノ岩、二次証言でスマホは見ていないと主張)
6・日馬富士、そのままの勢いででかいリモコンで殴る→貴ノ岩、とっさの事で何も出来ず。ひたすら頭をかばう。
7・白鵬と周囲の力士たち→止めるべき白鵬が何もしないので、ぽけっと見ている。この場を止められるのは年齢、立ち位置を鑑みて、白鵬しかいなかったが数十発殴られるまで止めない。つまり黙認。
8・白鵬、危機感を覚えて日馬富士を外に連れ出してなだめる。その辺でいいだろうと。白鵬、満足か。(※のちに日馬富士がこんな大事になると思わなかったと発言してしている事から)
9・部屋に戻り、白鵬がとりあえずの仲直りをさせる。これで貴ノ岩も大人しくなるだろう、と白鵬、一安心。
10・日馬富士と貴ノ岩、鳥取巡業→昨晩は失礼しましたと貴ノ岩が頭を下げる。お互い酔っていたのは確か。日馬富士は頭を下げられたので、これで解決と思う。鳥取巡業で貴ノ岩が相撲を取るも、頭から当たらず、マワシを取って、すぐに勝負を決める。頭にダメージが残らないように気をつける→のちにそれを見た、テレビコメンテーター数人が「きちんと相撲取れているのが謎ですよね」と場違いなコメント。それについて撤回せず。
11・貴乃花親方に貴ノ岩の怪我がみつかり、これは傷害だと判断した貴乃花、後述する彼の相撲界への危機感から鳥取警察に被害届提出。刑事事件へ。
この構図、もっと簡単にまとめます。暴走族に例えてみます。
《むかつく後輩がいた。他のチームに所属。でも地元の後輩だから俺は言う権利はあるだろ。他のチームの違う地元のメンバーなら言わないけれど。地元のほかの同期も呼んで、生意気な後輩を呼ぶ。説教をするけど反発をくらうので、道具で頭をかちわり、びんたをくらわす。他の先輩らはそれを見ている。後輩が大人しくなったので、一件落着。》
……これは、まさに暴走族のヤキです。それも横綱が三人も関わっている(暴走族のヤキの方がまだ潔いかも知れません)。これが国技? 神事? 天皇陛下が観覧する伝統競技ですか?
それを、「かわいがり体質だから」「そういう世界だから」とかばう、相撲協会寄りのコメンテーターがいるのは勉強不足も甚だしいでしょう。
確かに芸能界でも「誰と誰が喧嘩した」「誰それが喧嘩ナンバー1だ」という話は聞きます。が、今回は絶対逆らえない地位の人間から、下の人間への暴力です。芸事の上での喧嘩ではないのです。制裁と言ってもいいかも知れません。相撲コメンテーターは、日馬富士や協会をかばわないと仕事がなくなるからそう言わざるを得ないとは言え、世間の常識とズレている事に気づいていないのでしょうか。これでは相撲から世間の目が離れていき観客も減るとは考えないのでしょうか。巡業で見せる顔、「優しくて力持ち」のお相撲さんの裏の顔はこんなにも暴力的だったと知った子供たちはどう思うでしょうか。
相撲のかわいがりは、体力の限界を超えた「練習」です。これは他のスポーツでも見られます。野球の百本ノックや、僕も経験したラグビーのランパス(ランニングパスという基本練習)100往復などなど。これらはかわいがりと表現出来るかも知れません。そこに暴行はないです。
貴乃花親方は、このヤキ(暴行事件)を貴ノ岩から聞いたときに、慄然とした事でしょう。あの時津風事件の悲劇と構図は同じではないか、と。集団でうちの子供(弟子)にヤキを入れだけではないか、と。
相撲界の問題を貴乃花はこう言っています。
「我々は相撲界の人間という誇りがありすぎる。一般社会から煙たがれる存在になってしまうかも知れない。相撲の歴史は単純に2500年の歴史がある。これを変えるには40年、50年、60年かかると思いますよ」(大意「情熱大陸」(TBS系列))。
貴乃花が、理事会で「黙秘」を貫いた理由はこの発言にあると思っています。
「変わるには50年かかる」。
「世間から煙たがれる存在になってしまう」。
これが一番危惧している事でしょう。実際。相撲のイメージは本当に悪くなりました。卑近で申し訳ないですが、相撲観戦歴数十年の知己のファンも「もう相撲は見たくない」と言っています。
●白鵬はなぜ「嘘」をついたのか
情報が錯そうしていて覚えている方も少ないかも知れませんが、白鵬は暴行発覚当時、日馬富士をかばう発言をしています。
「ビール瓶で殴っていない。ビール瓶を振り上げてすべり落ちてしまった」
結果、今のところリモコンで殴った事になっています。ではなぜ白鵬は具体的にビール瓶という言葉を使ったのでしょうか。「ビール瓶かどうかは分からない」と言わなかったのでしょうか。
「報道は間違っている」「これは大した事ではない」と主張したかったのでしょう。これは引退会見で日馬富士が「こんな大事になるとは思わなかった」という発言につながります。
白鵬の「ビール瓶で殴っていない」発言は彼の日馬富士に対する、後ろめたさの表れではないでしょうか。
「貴乃花の行動は理事としていかがなものか」「貴ノ岩に発言させろ」とテレビでは騒々しいです。
相撲リポーター、コメンテーターにとってみれば協会への援護射撃でしょうが、貴乃花の言う通り、警察の聴取が終わってからでよいではないですか。貴乃花はよくも悪くも筋が通っている事を視聴者は気づいているはずです。
貴乃花が先日、「弟子は守る」と発言しました。
その真意は以下の発言から推察できます。
「先代が苦労して守ってきたこの部屋だ。誰が変わりれど俺は変わらないという信念はある。ここがなければ故郷はない。でもこの故郷に弟子と一緒に住んでる。こんな幸せな事はない」(大意「情熱大陸」TBS系列)。
こんなかわいい弟子である貴ノ岩を横綱が三人で大怪我をさせたという事実を解明するため。貴乃花は協会と闘う覚悟を決めたのでしょう。また被害者である貴ノ岩をかばうためにも、自分が矢面に立って批判を真正面から受けると覚悟したと思われます。
そして貴ノ岩が復帰した際は、協会もファンも貴ノ岩を全面的に支援すべき態勢を取って頂きたいと思う次第です。(久田将義)