美少女フィギュアは児童ポルノ抵触? ブログ削除騒動の不可解な経緯

figyua.jpgブログ削除通告に反発したユーザーの署名が1000人以上に。(change.org)

 児童ポルノ法に関係する話題として、「美少女フィギュアの画像が児童ポルノに該当するとしてブログ削除を通告された」という情報が波紋を呼んでいる。

 この問題は、GMOメディア(以下GMO社)が提供している「teacup.ブログAuto Page」というブログサービスを利用していたフィギュア(ガレージキット)サークルが、GMO社からブログの削除を通告されたことが発端となった。

 当初GMO社は削除理由を「外部機関から、児童ポルノまたはそれに類する疑いのある内容が掲載されていると指摘を受けた」としていた。 ところが、該当するブログには児童の写真など掲載されておらず、あるのは自作フィギュアなどの写真のみ。これに疑問を感じたブログ管理者らが「これのどこが児童ポルノなんだ?」と、1,000件を超える著名を集めるなどして事態の解決に動き出した。

 こうした中で著名運動の発起人を務めたライターの廣田恵介氏の取材により、GMO社の言う “外部機関” とは広告主であることが発覚し、事の経緯が明るみになった。

※発端となったブログ

「うさPハウス 相田和与の ちんたらぽんたらやってるBlog」

http://green.ap.teacup.com/usap/

※移転先のブログ

「うさPハウス 相田和与ブログ2nd season」

http://blog.livedoor.jp/usaphouse/

※著名発起人 廣田恵介氏のブログ

「550 miles to the Future」

http://mega80s.txt-nifty.com/meganikki/

 事情が明かされてみれば、この騒動は “児ポ法” とは無関係であることが解る。にも関わらず、GMO社が迂闊に “児童ポルノ” という単語を使ってしまったがために混乱を招いたというだけの話だ。GMO社もその点を認め、児童ポルノという単語を使用したことについて謝罪している。

 ではいったいどういった理由でフィギュアサークルのブログが削除対象となってしまったかという点だが、GMO社の説明ではここが非常に苦しい。挙げられた具体例として、ブログの背景に使っていたフィギュア画像が卑猥だからということなのだが、その画像は胸や股間といった 「出しちゃいけない部分」が出ている訳ではなく、スクール水着とニーハイを組み合わせたようなデザインになっている。

 これが卑猥というならば、例えば地上波TV番組などに出演しているアイドルの衣装などにも卑猥としなければおかしい物があるし、実在する女性がやっている分だけ “より重罪” であろう。GMO社の提供するサービスの中には、そのような画像は一枚もないと言うのだろうか? 例えばJUGEMの芸能人ブログで水着姿の自撮りが掲載されたら、そのブログは今回と同じように一方的にブログ削除されるのだろうか?

 ネットの広告業界に詳しい人間として憶測混じりに話をさせていただくと、こうしたケースでは、ブログサービス提供者は「脳みそを動かさずに対応する」と考えて差し支えない。

 末端の利用者視点で見た場合、外部からの「名誉毀損だ! 発信者情報を開示せよ!」といったクレームに対しては、個人情報保護の観点から比較的公正に判断してくれ、事と次第によっては利用者の盾になって戦ってくれるケースもある。

 しかし広告主にせっつかれると「すぐに対応します~削除しときます~ポチっとな」で済ませがちなのだ。特に「お前のとこはアダルトサイトなのか? ウチはアダルトには広告掲載しないぞ! 悪い評判が広まったらどう責任取ってくれるんだ!」とでも言われたら、事実確認もおろそかにしたまま強引な手段を採ってしまう。この辺りは紙媒体も電波媒体もネット媒体も差はない。

 今回の一件は表現問題うんぬんとは全く関係なく、単に「広告主に弱すぎるメディア」がヘマをやらかしたというだけの話と考えていいだろう。

 さて、表現規制問題は今なお余談を許さぬ状況にあり、いつ何時強権が発動して無茶苦茶な法改正がなされるか解らない。そんな状況だからこそ、無駄に規制・自主規制の範囲を広げることにならぬよう、不用意な言葉の使い方は謹んでいただきたいのだが、今回の一件でもまた”児童ポルノ”という単語が(無関係なのに)大安売りされてしまった。

“擬似児童ポルノ” “CG児童ポルノ”ときて、遂には”児童ポルノフィギュア”である。これらのどこにも守るべき児童がおらず、CGとフィギュアに関しては無機物なのに、何故か単語だけがひとり歩きし 「あれも児童ポルノ、これも児童ポルノ」という意味不明の拡大解釈がされてしまっているのだ。

 だが、これらはオカミが正式に「それらも児童ポルノと看做す」と宣言している訳ではなく、情報を伝えるメディアが勝手にばら撒いている造語(誤報と言ってもいいレベル)である。これでは表現規制問題に詳しくない人間・企業らが 「CGやフィギュアも児童ポルノなんだ」と思い込み、自主規制を始めても仕方がない。もしかするとGMO社の担当者も、そうした報道によって混乱し、児童ポルノの範疇が解らないまま 「こういうのは児童ポルノと言っておけばいいんだろ?」と、何の気なしにテンプレメールを送り付けてしまっただけなのかもしれない。

 言ってみれば、表現の自由を守るべき立場にあるメディアが、人目惹きたさに意味も考えずインパクトのある単語を書き散らし、自分で自分の首を締めてしまっているのが、表現規制問題の実情である。二次元も三次元も関係なく規制を進めたい連中からすれば、こうした問題が起きる度にメディアが勝手に誤解を招くような報道をしてくれるのだから、都合が良すぎて笑いが止まらないだろう。

 現行の法では、二次元作品は児童ポルノにはあたらない。もし二次元作品が何らかの理由で摘発・処罰を受けたとしたら、それは「児童ポルノだから」ではない、何か他の理由があったからである。せめてこの点だけでも頭に入れておいて欲しいと願うばかりだ。

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Written by 荒井禎雄

Photo by wikipediaより

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