『ファミ通』が丸パクリゲームをおすすめアプリとして紹介する事案が発生
▲丸パクリしたアプリを大絶賛してしまった「ファミ通APP」
予めお断りしておきますが、私は超が付くほどのゲームっ子で、「隣り合わせの灰と青春」 を読みたいがためにファミコン必勝本を買い、ガバスを集めるためにファミ通も買い、ファミマガにはウソテクを投稿して1回だけ採用されました。ついでに言えば、人生の節目節目で常にSEGAハードを選び続け、話が合わずに何人も友達をなくした事のあるSEGA信者です。なおかつ元ゲームライターで、社会の最底辺でドリームキャストやプレステ2のゲーム攻略本をセコセコと書いておりました。
そんな過去がある人間ですので、今でも出版含むゲーム業界を応援する気持ちは人一倍強く、足を引っ張りたいだなんて考えはこれっぽっちもありません。本当です。
さて、ファミ通が日本のゲームのデータを丸パクリした海外のアプリを、オススメゲームとして全力で紹介してしまうという事案が発生した。
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ファミ通APPの魚拓
http://megalodon.jp/2014-0923-1021-20/app.famitsu.com/20140922_442293/
【注目レビュー】外国人が見た日本のカオスアクションゲー『Galaxy Ninja』の意外な完成度に脱帽
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上の記事では、海外製アクションゲーム「Galaxy Ninja Ginga NinkyouDen」が、外国人が日本に対して持っている変なイメージを凝縮させたカオスな内容で面白かったらしく、注目のオススメアプリとして紹介されている。ところが、この記事が掲載されるや否や、主にアラフォーのゲームファンを中心として罵声が飛び交う事となった。何故かというと、ここで紹介されている「Galaxy Ninja Ginga NinkyouDen」なるゲームは、ジャレコより1987年に発売されたアーケードゲーム 「銀河任侠伝」のグラフィックを丸々盗用して作られているからだ。
私なぞ当時駄菓子屋ゲーセンでアホかというくらい遊び倒したので、最初に記事を読んだ時は 「すわ銀河任侠伝が奇跡の復活か!?」と驚いたほどだ。今でもあの絵を見ると反射的にベビースターラーメンのパチモノ的なフライ麺(¥10)の味が口内に蘇る。
さて、問題の記事がサイトに掲載されたという事は、ライターが書いた原稿が編集部のチェックを通過したという事であり、という事は編集部内に「銀河任侠伝」を知っている人間がいなかったという証拠になってしまう。そうですか、ファミ通の看板を背負っているゲームライターや編集者なのに、かの迷作「銀河任侠伝」を知らんのですか……。
いくら色々と問題があり過ぎてコンシューマ機への移植もDL販売も二度とされないであろう「銀河任侠伝」とはいえ、このような扱いを受けたままでは哀れ過ぎるので、今回は東京ブレイキングニュースに全くそぐわない内容になることを承知の上で紹介させていただく。
「銀河任侠伝」とは、主人公のやっちゃんがパっと見て解るレベルでヤクザ(おそらく広島系)で、義・理・人・情と書かれたパワーアップアイテムを取ると、武器がパンチ→ドス→ポン刀といった具合に、より効率よく殺傷できるようになる。この「主人公のヤクザがカチ込む」という時点でレイティングに引っ掛かるというのが、この作品が幻のゲームになってしまった要因のひとつであり、割と東京ブレイキングニュースで扱うのに相応しい内容になってしまった事に我ながら驚いている。
ヤクザのやっちゃんは、敵のコブラ軍団にさらわれた恋人を助けるために一刻館などにカチ込みをかけ、押し寄せる敵をバッタバッタとポン刀で真っ二つにし、またドスで刺し殺して行く訳だが、一刻館という名称で解る通り、登場するキャラクター及び背景の殆どが何らかのパクりである。それがパロディの域を超えてしまっており「知的財産権ってなんだったっけ?」という有り様なのだ。 これが「銀河任侠伝」が二度と陽の目を見られない最大の要因である。
参考までに恐怖のコブラ軍団のメンバーを紹介すると【ゴジラ・寅さん・ザク・大魔神・ジェイソン・ランボー・花形君・寺内貫太郎・キョンシー・ジャイアントロボ・輪島・アニマルウォリアー・KYワカマツ・月光仮面・スケバン刑事(二代目)・あしたのジョー】……などによく似た方々が、雑魚キャラまたはステージボスとして登場する。
この時点で「誰にどう許可を取ればいいんだろう?」という話であり、これに加えて各ステージの背景には仮面ライダーやバカボンパパなどに瓜二つのキャラクターが写り込んでいるため、どこを切り取っても言い逃れが不可能だ。
つい先日、海外セレブの流出写真を無断で掲載しようとして大変な事になった護国寺界隈の出版社が話題になったが、上のリストを見れば「もし万が一なにかあればその比じゃない」とご理解いただけるはず。日本国内の版権物だけならまだしも、ハリウッドにまで粉をかけている点にジャレコの凄みを感じる。
しかもグラフィックがたまたま似てしまったというだけなら薄目で見ればなんとかなるかもしれないが、敵キャラや攻撃の当て具合によって散りざまが違っており、あしたのジョー風の雑魚キャラはタイミングよく攻撃を当てるとクロスカウンターが炸裂して真っ白な灰になる。どうやらジャレコ様はハナから逃げ隠れするつもりが無いらしい。これが漢の心意気であり、ちなみにジャレコの業界参入1作目はスペースインベーダーのコピー品「スペースコンバット」である。どうだろうこの覚悟の決まり具合。
余談だが、プレイヤーに爽快感を与えるため、敵キャラの散り方に気を配る点は非常にジャレコ的であり、STGの古典「エクセリオン」では、タイミングよく弾を当てると敵が真っ二つになる演出が施されていた。しかしながら、この「銀河任侠伝」では寺内貫太郎や寅さんが日本刀で真っ二つになる訳で、それは爽快とはまた違う快感を得られてしまうので注意が必要であり、出るとこに出た際により罪が重くなりそうなチャームポイントでもある。寅さんをドスで刺すとか、背景を色々と知っている人間からすると「どんな悪い冗談なんだろう」と背筋が凍る。
この脳みそがヒリヒリする “ブラック&ナンセンス+妙な爽快感” がジャレコ特有の作風と言え「日本のゲーム業界に深みを与えたちょっとナニがアレなメーカー」 だと称せるだろう。燃えプロでセットポジションからセカンド方向に振り返ったピッチャーの顔が緑色だった時の衝撃は今でも忘れられない。あれはバグだったのか仕様だったのか、はたまた危険ドラッグの類がもたらしたものなのか……。
さて、原稿が落ちるレベルで長くなってしまったが、銀河任侠伝(及びジャレコ)とはこのような代物であり、それを外国人が盗用してゲームを作るなど、本来ならばどこから笑っていいのか迷うレベルの珍事なのだ。しかもそこに「天下のファミ通が銀河任侠伝を知らなかった」「それどころか読者にオススメしてしまった」 が加わる訳であり、これはもはやモンティ・パイソンが台本を書いたに違いない芸術的な笑いである。
「ジャレコ」と「銀河任侠伝」なんていう美味しいネタがあるならば、この3倍程度の文字数は楽に書けると思うので、問題の記事を書いたライター氏は天下のファミ通の看板を背負っているのだという自覚を持って職務に励んでいただきたい。
という訳で、次回はみんなお待ちかねのデータイーストとテクノスジャパンの特集をお送りするぞ!(ウソ)
Written by 荒井禎雄
天下のファミ通なのに…。