70~80年代テレビが熱かった時代 プチ鹿島著『ヤラセと情熱 川口浩探検隊の「真実」』

著者の「川口浩探検隊シリーズ」への愛と情熱に脱帽です。

芸人さんの本なのに、やっている事はれっきとしたルポルタージュ。『ヤラセと情熱 川口浩探検隊の「真実」』(プチ鹿島著 双葉社)の読後感です。1980年代を象徴するようなハチャメチャなテレビ番組『水曜スペシャル』の『川口浩と探検隊シリーズ』(1976~1986)という番組を皆さんはご存知でしょうか。

テレビクルーが川口浩(俳優)を「隊長」とし、アフリカや東南アジアに行って猛獣や幻獣などの正体に迫るというものです。放送当時の1980年代半ば、僕は高校生で、ある程度大人びていたのでこういった番組に対しては冷笑的でした。けれども、どうしても抑えきれないロマンがあります。それは小学生の頃読んだ「ネッシー」や「ツチノコ」などの恐竜の生き残りや未だ発見されていない獣の絵や写真でした。

まだ世界には未開の地がある。そして、そこには見た事のない生物が棲んでいる―ー。

この手のロマンを具現化したものが、「川口浩探検隊シリーズ」でした。猿人や人食いピラニア、頭が二つある大蛇など数々の発見をしていく川口浩探検隊。番組が人気になるにつれて、真面目に「ヤラセだろ」という世間の声も大きくなり週刊誌などでバッシングされるのですが、「ヤラセではない、演出である」という立場から筆者は当時の制作者たちにインタビューを重ねていきます。そこには「演出」に体を張った男たちの肉声がつまっています。

プロレスにも似ています。一時、プロレスは「八百長だろ」という世間と闘っている時期がありました。そこに村松友視著『私、プロレスの味方です 金曜午後八時の論理』などが世間と対抗していきます。

この本もそれに似ていて、かつ一歩前に出てクールにそして時には熱く『川口浩探検隊シリーズ』の中身を解明していきます。「ヤラセだろ」が子供っぽく、それではなく「演出」としてこの番組を楽しんでいるんだという大人の見方を本書は提示してくれます。