ヤクザが減ってもトクリュウはなぜ増えるのか 警察も追いつけない「いびつな犯罪」

写真はイメージです。

週刊文春2025年4月17日号でこんなワイド記事が目につきました。

【『トップを狙え』『それって誰?』 トクリュウ捜査で警察が空回り】

ヤクザの数は警察庁によると「9千5百人」。しかし2024年に検挙されたトクリュウの人数は1万105人になったと言います。トクリュウとは「匿名流通型犯罪」の略。

『トクリュウの下っ端ではなくトップを狙え』。ですが、警察や暴力団と違い明確なトップがいないのがトクリュウの特徴。現場には『トップって誰?』という戸惑いもあるようです」(週刊文春4月17日号より)。

この記事を読む前から感じていたと事ですが、警察行政は2011年の暴力団排除条例施行あたりから、「犯罪の時代性」に追いついていないと言ってよいと思います。

まず、「トクリュウ」は犯罪グループではなく、犯罪形態の一つです。ヤクザとマフィアのようにトクリュウという集団が本拠地を構え、決まったリーダーの元、犯罪を犯している訳ではないのです。

やっているのはあくまで、半グレ(準暴力団)と受け子・出し子として使われる一般人(主に若者)。そして最近の傾向としては半グレのさらに上に暴力団員の存在が確認されています。なので「トクリュウのトップを捕まえろ」と言われても、ヤクザのように事務所を構えている訳ではないのでガサをかけられるはずもなく、また在籍しているかどうかのリストもありません(だからこそ匿名流通型と言われている)。トップは幻のようなものです。

拙著『特殊詐欺と連続強盗』(文春新書)で解説したように、もともとは1990年代後半から2000年代前半に猛威を振るった「オレオレ詐欺」から続いている犯罪です。その頃は、暴力団排除条例が施行されずにいました。が、2011年に施行されてからヤクザは銀行通帳も運転免許証も作れず生活権を奪られたに等しいでしょう。食えなくなったヤクザがどうしたか。今までは、半グレのシノギだったオレオレ詐欺や大麻売買に浸食していきました。

それ以前の、暴対法までは警察行政は結果としてですが悪手ではなかったと思います。それ以前はバブルでしたから、総会屋とヤクザの「タッグ」で企業テロや地上げなど一般社会の滲出していきました。さすがにそれはやり過ぎだろうと、警察行政が釘を打ちました。

ここまでは、良かったのですが「暴排条例でヤクザをなくす」という目的を警察行政は掲げます。結果として名目上、ヤクザは少なくなったもののトクリュウと言われる犯罪が増加していくことになっています。本末転倒です。そしてヤクザがおとなしくしている限り、警察は彼らを取り締まる事は出来ず、その反面半グレ(準暴力団)の数が増加していると思われます。

やっかいなのは、「増加」と言っても前述したように本拠地もリーダーもいないは半グレに対し、警察はどう対処して良いのか、犯罪を未然に防ぐのか、後手後手に回っているのが現状です。

「ルフィ事件」やタイで逮捕された元関東連合のメンバーがいます。彼らはある意味「トクリュウのトップ」ではありますが、トクリュウが確固としたグループでない限り、新たなトクリュウのグループが、虎視眈々と次なる犯罪の機会をうかがっているのです。ここでは、暴力団排除条例は失敗しているということを結論としたいと思います。(文@久田将義)