20年の遺伝子 AKB48がリクエストアワーで魅せたパフォーマンス 「国民的アイドル」は健在だった

何をもって「国民的アイドル」と称するのか。議論の分かれるところではありますが、AKB48は紛れもなく国民的アイドルにふさわしい「ブーム」を作り上げてきたと言ってよいでしょう。言論界、政治家なども巻き込んだ社会的ムーブメントを起こしたのです。それが約20年前。中でも総選挙上位7人(最初の総選挙で選ばれたメンバーを指す)を「神7」とファンは言うようになりました。そんな彼女らの遺伝子は現メンバーにも受け継がれている。そう、感じさせる2025年12月4日の日本武道館「リクエストアワー」でした。12月4,5,6,7日の4day。
AKB48の名物イベント「リクアワ」ことファンが「この曲が良い」といって投票で人気曲を決める「リクエストアワー」が開催されました。正式名称は「AKB48 20th Year Live Tour 2025 in 日本武道館 〜あの頃、青春でした。これから、青春です〜 リクエストアワーセットリストベスト20」。ファンからの投票だけあって、シングルリリースされなくても劇場だけで演奏される「劇場曲」がノミネートされる事もあるのが、この「リクアワ」の面白さです。
20位からスタートした「リクアワ」ですが、早くも『根も葉もRumor』というAKBの楽曲の中では最もハードなダンスを披露するといったものが登場。踊り終えたメンバーの息遣いが、そのハードさを物語っていました。
18位には「AKB劇場の象徴」とも言える存在であり、今年6月に卒業した村山彩希の卒業曲『ゆいりー』。村山彩希が登場しソロでこのバラードを歌いあげました。
OGで言うと、かつて「※AKB調べ」(フジテレビ系列2014年~2015年)で「絶対怒らないアイドル」として「調べ」られた2期生柏木由紀が登場。この日のライブを2人のOGがサポートし盛り上げます。
しかし、サポートがいらないほど現・メンバーで「ザ・アイドル」「ザ・正統派」とも言えるパフォーマンスを魅せたAKB48。何より、総監督の倉野尾成美がその重責を見事に果たしていました。この人が、武道館のお客さんとメンバーを、MCとパフォーマンスでマネージメントする姿は、感心するほかありません。
かつて、総監督と呼ばれた人たちは、それぞれの役目を果たしファンの記憶に残ってきました。元気よいけど涙もろい初代高橋みなみ、か弱さの中からしっかり者へと立ち上がった二代目横山由依、落ち着きつつ冷静な三代目向井地美音。そしてお姉さんのような存在の現総監督倉野尾成美。彼女が今回の「リクアワ」の立役者と言っても良いくらいでした。
1位は福岡聖菜がセンターを務めた『抑えきれない衝動』がセレクト。福岡聖菜もその感激をマイクで表現していました。
現在、様々なアイドルグループが活躍しています。それぞれが独特の世界観を持っています。そしてAKB48は20年という歳月の厚みを十分に活かした「ザ・AKB」とでも言えるキラキラ感・ワクワク感をライプではファンに届けています。こういったグループはAKBの他はありません。社会現象にまでなった先輩たちの遺伝子はしっかりと後輩である、現メンバーへと受け継がれていると確信しました。
また今回は19期生が研究生からメンバーへと昇格。研究生当時から「この子は注目だな」と思っていた伊藤百花も含めた5人が涙ながらに挨拶をしました。また21期生も紹介。

倉野尾成美が自己紹介もまだしっくりこない(当然です。いきなり武道館ですから)5人に優しく的確なフォローを入れて場をおさめます。こういう所だよなと思わず、心の中で呟いてしまいます。
小栗有似がセンター曲が多いと思いますし、その貫禄と成長も見られたのも収穫でした。渡辺麻友さんを憧れという正統派美少女アイドルです。いつの間にか、マイクが上手くなっていました。劇場があるとこういうセンスが磨かれていくものですね。
パフォーマンスは、皆、それぞれ素晴らしく誰が一番とかはないです。が、強いてあげれば山﨑空さんが常に笑顔でいる事と、大体の表題曲の選抜に入っているのにその笑顔が作り物でなくアイドルそのものといったパフォーマンスは見ものでした。
僕はアイドルのコンサートに行った時に取る行動があります。自分の感想は果たして正しかったのだろうか、という疑問を持っているからです。従って帰り道にファンの方々がつぶやく声に耳を傾ける事にしています。今回は、男女で来ている方や女性の方が目立ちました。あるカップルが話していました。そして女性が「ポニーテールとシュシュ」を口ずさんでいました(因みに、僕はこの曲でAKBの大メジャー化が始まったと思っています)。それを聞いてよほど印象に残ったコンサートだったのだな、と感じました。そうでなければ歌など口ずさみませんから。
今回、AKB48はNHKの「紅白歌合戦」に登場します。参加OGは前田敦子、大島優子、高橋みなみ、峯岸みなみ、指原莉乃、柏木由紀、板野友美、小嶋陽菜(敬称略)の予定です。
渡辺麻友さん、篠田麻里子さん以外がいない「神7」ですが指原さんは総選挙1位を取っており柏木さんも活躍ぶりから「神7」と全く遜色がありません。ファンも納得でしょう。
「テレビ組」がどれほどのパフォーマンスをするのか、ぜひ現メンバーは学んで欲しいものです。そして視聴するお茶の間の方々は特に、新規の方はAKB48のキラキラ感を感じ取って、そして沼って頂きたいのです。そうすればAKB48はまだまだ伸びしろがあるのだという事が、見ている方には伝わると思うのです。
20年の間に色々ありました。喜怒哀楽。色々なメンバーがいて色々な事が起こりました。それはしかし20年間で糧となって、AKBの血となり肉となって、現在のような他チームと比較しても全く劣らない完成度になっていったはずです。「ここからだ」公演というものをやりました。「ここから」。
それは「紅白から」なのか「20周年から」なのか。いずれにしろAKB48はフェニックスのように我々の前に羽を広げて姿を現してくれるでしょう。今夜の日本武道館のパフォーマンスを見てそう期待されられました。(文@久田将義 写真ⒸAKB48)















